韓リフ先生の視点が優れている理由のひとつ

 ⇒「 不謹慎な経済学 (講談社BIZ): 田中 秀臣: 本」

 ただ、僕には不安な点も一つある。それは、湛山の小国主義の「理念」だけが賞賛されてしまい、その経済論的側面が無視されてしまうのではないか、という懸念である。
 湛山が訪中の前から構想していた「日中米ソ平和同盟」論は、長期には軍備撤廃、世界国家、「第三の生活原理」(資本主義でも社会主義でもない第三の道)を長期的な「理念」にしていたという。これは一見、現実的な経済論からは遠い議論のように見える。しかし実際には、ソ連フルシチョフ首相(当時)による米ソの緊張緩和という「現実」を背景にした、実践的な意義を持つ平和論だったのである。すなわち「国民の富を再軍備や軍備拡大に使うよりも、国内の福祉に使った方が国民の幸福につながる」という観点であり、これが湛山の平和活動の基礎であった。その点では、戦前の小国主義の主張と同じ経済論的色彩が強い。
 しかし、今日の湛山への再評価は、憲法第9条を中心とした護憲論や、「国を喪うことも覚悟した」軍備全廃・平和論などが多く、その実践的な側面や経済論的な側面を顧みないものばかりだ。このまま単なる「湛山のイデオロギー化」が進みはしないかと、僕は案じている。

 まったく。