今日の一句

 虚を睨む三月十日の未明なり 終風

 春の日のスパンコールか犬ふぐり 終風

 長閑なる春陽や修羅の心にも 終風

 白梅の弱き白なり曇り空 終風

 若草の野の道遠く分かれゆく 終風

 早春の光移ろう山野かな 終風

 夢に居る若き自分の春の頃 終風

 旅の日の名残に飾る吉野雛 終風

 三月の曇りの空の暗さかな 終風

 三月のウサギに手紙送らんか 終風

 この冬の終える生き物と共にあり 終風

 アスファルト半分濡れた二月尽 終風

 春近き大地が雨を吸っている 終風

 瞑目し春の小川を想うなり 終風

 如月の夕刻を切るビルの影 終風

 紙コップコーヒーの暖心鬱し 終風

 桜木に生す鮮やかな苔の色 終風

 貫之の昔の花の匂いかな 終風

 夕闇の梅の香りの若きころ 終風

 来年は咲かぬ紅梅美しき 終風

 ある夢で見るは二月のカレンダー 終風

 如月の雨のにおいに眠るもの 終風

 梅の木に会いに行かんか我が心 終風

 鳥が鳴く東にて聖ヴァランタン 終風

 氷を蹴り行く少年の背の細さ 終風

 冬の日の石像の影の中にいる 終風

 静かさや冬の小川に鯉の音 終風

 日が延びる二月の午後のスティルライフ 終風

 皺入った蜜柑を剥こう丁寧に 終風

 コーヒーの豆切れている冬の朝 終風