今日の一句

 東京の二月の雪の少なさよ 終風

 夜を刻む時計の音の二月かな 終風

 風邪ひきというロシアンルーレット 終風

 冬空の送電線の向こうかな 終風

 歳の数さあ豆を食えと鬼言うか 終風

 如月の語源は草焼きなるものか 終風

 冬の日の雨の暗さの物自体 終風

 冬の夜の地下の倉庫のジャムの瓶 終風

 鬼というものはいずこか枯れ木立 終風

 春の気というものなるかここに満つ 終風

 東海の春節の無き国にいる 終風

 一月の終わりの空の薄さかな 終風

 花巻を温めて朝の食とする 終風

 ユトリロの絵のような街残る雪 終風

 冬朝日ビルの古壁を染め上げる 終風

 この朝は古木の幹に残る雪 終風

 解けていく残りの雪の光かな 終風

 悉有とは仏性なりと銀世界 終風

 水音と女の耳の冷たさや 終風

 空風の向こうに父の里がある 終風

 天からの糸電話なきや冬の午後 終風

 認識か物自体なるか蜜柑食う 終風

 冬の夜の遠き銀河に転生す 終風

 鬱々と冬に眠らぬ獣かな 終風

 冬の雨待つためにいる暗い部屋 終風

 ある冬の暗き日なりと記憶する 終風

 湯気というものの姿の懐かしさ 終風

 カレンダー見て鏡開きを知る 終風

 出口なき冬の鏡の世界かな 終風

 常緑樹暗く滲んで眠る我 終風