今日の一冊 No.8 「こころ」夏目漱石

姜尚中さんの私の1冊「こころ」夏目漱石 | NHK 私の1冊 日本の100冊
 まあ、ぶっちゃけていうと、姜尚中には漱石は読めていない。まあ、そういうと失礼なんできちんと書くとぐちゃぐちゃしそうだが。
 そして、私は姜尚中に関心が持てない。左派の論客という以前、何を言っているのかよくわからない。これは単純に私がアホなだけかもしれない。メディアによく出てくるので否が応でも見かけるのが、奥様キラーなセクシーなヴォイスとセクシーなルックスなんで、ぐふぇと思うだけ。私は美形男子の思想家というのは受け付けない。西尾幹二を受け付けるものではないが、でも彼の言っていることはわかる、同意しないし、浅薄だなと思うけど。
 今回の番組は、しかし、なにか奇妙な作り込みがあった。作り手のなかに微妙な姜尚中へのクリティカルな構成意識があった。
 永野鉄男という戸籍名を出し、孫正義と同じくクズ拾いの子供時代を出しているのだが、たぶんその露出は姜尚中の意図的なものだろうし、はいはいと番組では定番で流していたのだろうが、微妙に「鉄っちゃん」という語りのなかで、姜尚中の幼い、あれね女からはたまらない男のかわゆさみたいな笑顔を写し取っていた。おお、このカメラの批評力はすごいと思った。
 たぶん、姜尚中という人はこの笑顔で、ずっと身近な人と繋がってきた人なのだろう。それを他のメディアで見せることもあるのか、私は知らない。そして、この奇妙な人なつこさと人への信頼感への期待の熱情は、在日の人によく見られるものだ。「月はどっちにでている」のような。
 姜尚中については仔細は知らないが、ほっておかないタイプの女性で、ありがちな知的で美形で実際には保守的な奥さんがいるのではないかと思う。ちとぐぐったらそんな感じはあたっていそうでもあった。「姜先生、素敵な奥様がいて、私なんか」という引きの思いがまたマダムキラーのツボでもあるし、そのあたりのプロテクションでうまく仕事をこなしてきたのではないか。なんか悪口書いてみるたいだな。
 これも詳しくは知らないが、姜尚中大塚久雄との関係に微妙なアンビバレンツがあるのだろうし、このマダムキラー的なペルソナもその関係の産物なのではないか。そしてたぶん、キリスト教信仰という内面においても大塚とのアンビバレンツな思いはあるのだろう。
 実はそうした各種のアンビバレンツが、彼にとっての漱石の「こころ」なのではないかと思うが、まあ、ちょっと与太を書きすぎたか。
 「こころ」については、山本七平著ということになっちゃったイザヤ・ベンダサンのこれがもっとも深いと思う、文学論としても。「こころ」との関連は上巻だけでよい。

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山本七平の日本の歴史〈上〉 (B選書): 山本 七平
 姜尚中に与太書いて、イザヤ・ベンダサン山本七平を称賛しているのだから、こりゃ、礫が飛んでくるのはしかたないか。まあ、イデオロギーとか抜きにしてそう思うのですがね。
 補助としてはこれが読みやすい。
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戦後日本の論点―山本七平の見た日本 (ちくま新書): 高澤 秀次
 高澤の見解は新書ということもあって、スキーマティックすぎる面もあるけど、それでもいちおう問題に向き合っている。