これね、石原さんが民主党のマニフェストを喜ぶあたりにね

 民主党支持のみなさんがじっと声も出してないげに見えるのがなんとも日本的光景。
 これ⇒【日本よ】石原慎太郎 国家の真の再生のために (1/4ページ) - MSN産経ニュース

それを意図するという民主党マニフェストなるものはあちこち矛盾も見られ、思い切ったばらまきのための財源の根拠に欠けるところが多いが、私にとって最も興味ある主張の一つは日米安保条約の見直しである。その手がかりとして日本に米国が多く保有している基地についての洗い直しと、地位協定の見直し。これは従来、日本の政治家が口にするのをはばかるようなタブーだった。

 戦後の日本の国際機関は単に日米関係のみに限らず、他国との経済問題も含めてすべて日米安保下でのアメリカの庇護(ひご)を前提に行われてきた。日本にとって、いかなる国際問題を考える場合にも日米安保はつねにアプリオリ(大前提)として存在していた。複合して変化しつつあるこの現代においてなお、半世紀を越える期間にたった一つの前提がまかり通るというのは面妖、というよりももはや滑稽(こっけい)な現象でしかない。

 民主党の今回のマニフェスト、いわゆる右派左派でいうなら、右派の反米ナショナリズムに近いものなので、なので、この石原さんが元気になってしまう。
 しかも。

 いつ紙屑(かみくず)にもなりかねないアメリカの国債を膨大に買いこんで彼等の経済を支え、彼等の戦略展開のために不可欠な先端技術を提供しつづけているこの国を、相手が実は密かにいかに評価認識しているかは、アメリカももてあましている北朝鮮の姿勢を眺めて昨年日本の複数の主要閣僚が、「もうそろそろ、この国でも核の保有についての論議があってもしかるべきではないか」という発言をしただけで、それを慰撫(いぶ)するために新任の国務長官が慌てて飛んで来たのを眺めてもわかりそうだが。

 間近の小国が狂気に見えても実に巧みなブラフを張り、隣の大国は果てない軍拡をつづけ、彼等の市場としての魅力にろくな軍備も持たぬこの経済大国は引きずられ、たとえ彼等の覇権主義がこの国の領土にも及ぼうとしても、保護者であるはずのアメリカは決して本気で身を乗り出すことはありはしまい。

 さすがにもう引退されるのがよかろうと思う。
 この石原知事の妄言(といってもいいでしょうさすがに、産経のミスかもの留保はあるが)を民主党マニフェストと同位置にきちんと批判できなくなったということが知識人が絶滅したことだと私は思う。そして、それは、つまり、理念的な左派が絶滅して、政治屋になりさがった左翼によって民主党は権力を得るということだ。力の構図でいうなら自民党も同じようなものだったが。
 日本の知識人は、反米というイデオロギーではなく、なぜ普通に世界のパワーポリティックスを見ることができないのだろうか。