毎日社説 社説:新政権に望む マニフェスト実現が大原則 国民との約束は重い - 毎日jp(毎日新聞)

 ちと長いが重要なので。

 一部新聞の社説が「基本政策は継続性が重要だ」「鳩山政権は対米政策で『君子豹変(ひょうへん)』せよ」と書いている。民主党マニフェストで示したいくつかの問題について、政策の継続性、実現可能性という観点から見直すべきだ、とする議論である。具体的には、補正の組み替え、温室効果ガス削減25%目標、高速道路無料化、日米対等化などが俎上(そじょう)に載せられている。確かに、政策によっては結果的に継続性を重視することもあるし、相手のある外交・安保政策では君子ならずとも国の最高責任者としてマニフェストを超えた政治決断を求められることもあろう。
 しかし、ちょっと考えてみたい。マニフェスト選挙とはいったい何だったのか。各政党がそれぞれに自分たちが政権を握ったらどんな日本を作るのか、そのためにどういう政策を展開しようとしているのか。その政策実現の段取りから財源までをすべて一つのパッケージにした未来設計図たる政権公約の競い合いであったはずだ。
 日本国民は民主主義のルールに従って、民主党の設計図を選んだのである。このことの持つ意味は重い。なぜならば、民意の後押しがなければこの設計図も単なる紙切れでしかなく、二つがセットになることによって、従来の政治力学では困難だった問題もまた前に進めることができるからだ。その中では、制度疲労した政策や制度を新しいものに切り替える選択肢も出てくる。継続を打ち破るのもまたマニフェスト選挙の一つの効能である。
 もちろん、マニフェストで約束したことをすべて変えてはならない、といった極端な主張をするつもりもない。例えば、マニフェストに盛り込んだものの、その後その問題をめぐり大きな環境変化があった時、または、実は間違った主張をしていることに気づいた時、などは英断をもって修正すべきである。ただその時は、なぜ修正するのか、明確な説明と検証が必要なことはいうまでもない。政策論争を否定するものではないが、マニフェスト選挙の意義も大事にしたい。

 これね⇒asahi.com(朝日新聞社):社説 2009年8月31日(月)民主圧勝 政権交代―民意の雪崩受け止めよ

■賢く豹変する勇気も
 天下り随意契約、官製談合、薬害、そして歴代の自民党政権がひた隠しにしてきた核兵器持ち込みに絡む日米密約……。かつて「消えた年金」を暴いたように、隠されてきたさまざまな闇を徹底的に検証してもらいたい。
 第二に、政策を具体化するにあたって、間違った点や足りない点が見つかったら豹変(ひょうへん)の勇気をもつことだ。
 マニフェストを誠実に実行するのは大事なことだ。だが民主党が重く受け止めるべきは、その財源について、本紙の世論調査で83%もの人が「不安を感じる」と答えていることだ。高速道路の無料化など、柔軟に見直すべき政策はある。むろん、政策を変えるならその理由を国民にきちんと説明することが絶対条件だ。
 急ぐべきは一般会計と特別会計の内容を精査し、ムダな事業や優先度の低い政策を洗い出して、国民に示すことである。その作業なしに説得力のある予算編成は難しい。
 鳩山新首相は、9月下旬には国連総会やG20の金融サミットに出席する。これまでの外交政策の何を継続し、何を変えるのか。基本的な方針を速やかに明らかにし、国民と国際社会を安心させる必要がある。
 第三に、国家戦略局行政刷新会議をはじめとする政権の新しい意思決定システムを、人事態勢を含め着実に機能させることだ。
 自民党政権の特徴だった政府と党の二元体制に代えて、政策決定を首相官邸主導に一元化する。官僚が政策を積み上げ、政治が追認するというやり方を改め、政治が優先順位を決める。まず来年度の予算編成にそれがどう生かされるかを国民は注視している。

 これは朝日が変すぎ。
 話を毎日社説に戻して。

 この論自体をどう評価するかは考え方が分かれよう。露骨な米国批判を慎むべきだ、との声もあるだろうし、米国に対等に物申すスタート台と受け止める向きもある。
 問題は、この論文が、「反米的」と受けとめられその印象論が独り歩きしていることだ。論文では、あくまでも「日米安保体制が日本外交の基軸であり続ける」ことを前提にしているにもかかわらず、である。民主党の外交・安保政策は、むしろ我々がこれまで指摘してきたように「日米対等化」の方向性のみあるだけで具体的な中身に乏しいところに特徴があった。なのに「反米的」との決めつけは早すぎはしまいか。

 これは話が逆で、オバマ政権が実質子飼いのNYTを使って探りを入れたということで、あの論文自体は象徴的な意味しかない。つまり、修辞でどうなるというものではなく、給油問題など実質的な部分で同質のシグナルを送っているからだ。
 ⇒Mary Kissel: Japan Elects DPJ Anticapitalist Leader - WSJ.com

But Mr. Hatoyama is intent on scoring populist points at home by talking about distancing Japan from that very alliance. The first thing he's likely to do is stop Japanese self-defense forces in the Indian Ocean from refueling the U.S.-led coalition in Afghanistan. That won't have much practical effect, but the symbolism matters. The DPJ also wants to renegotiate U.S. basing agreements and do more with the United Nations, that most effective of fighting forces. Like Mr. Obama, the Japanese leader also likes the utopian idea of a nuclear-free world. North Korea's recent tests and missile launches make that kind of thinking seem naive.

 NYT寄稿の表層的なことで問題がなんとかなると思っているのなら……と思うが、それでもなんとかしたほうがよいというのはあり、
 それなら⇒Observing Japan: Rethinking Hatoyama's essay

The one bit of good news that I've heard on this front is that Hatoyama may be considering appointing Uesugi Takashi, a quite good freelance journalist who was once a secretary for Hatoyama Kunio and worked for the New York Times in Tokyo, as a secretary to the prime minister for media affairs. Uesugi has made a career of critiquing the media, and has evinced a sophisticated understanding of the workings of both the domestic and foreign media. Young and well-spoken, he would make an excellent public face for the Hatoyama government. Uesugi himself has said that he has heard nothing.

 すでに有能なスポークスマンですけどね。
 
追記
 日経も⇒鳩山政権は対米政策で「君子豹変」せよ(9/2):NIKKEI NET(日経ネット)

 鳩山政権に対する最も深刻な不安は、外交政策とりわけ対米関係をめぐるそれである。民主党が野党時代の態度を貫けば、不安は現実になるだろう。鳩山政権にとり「君子豹変(ひょうへん)」は不可避であり、私たちはそれを求める。
 君子豹変は、節操なく態度を変える意味で使われがちだが、本来は違う。広辞苑によれば、出典は易経であり「君子は過ちがあればすみやかにそれを改め、鮮やかに面目を一新する」とある。