日経社説 日中は危機を共有できたか : NIKKEI NET(日経ネット)

 中国は今回、世界保健機関(WHO)の5月の年次総会への台湾のオブザーバー参加を初めて容認した。来年以降も台湾の参加を認めなければ人道上、中国が逆に孤立する。

 今回のケースでWHOはけっこうべたなところがあるので早々に豚インフルエンザとしたし、Swine fluは米国では一般的な言葉というかそれなりの歴史もあるが。
 これね⇒極東ブログ: 1976年のギラン・バレー症候群
 豚から感染したんじゃない、とか、豚肉は安全だとか、まあ、しかたないとはいえ、次第に「新型」ということにしたかのようだが、この問題の本質はまさに「豚インフルエンザ」にあるのだけど、そのあたり、根路銘先生が書かれていたような話を識者があえて控えているようでもある。このあたり、根路銘先生の説と新説との違いがあるのかもしれないのだが、まあ、私もうかつにものは言えないなふうではあるな。
 ちなみにランセットSwine influenza: how much of a global threat? : The Lancet
 コピペもあった⇒TLAXCALA : Swine influenza: how much of a global threat?

毎日社説 社説:日中首脳会談 トップ交流は大切だが - 毎日jp(毎日新聞)

 一方、温首相は麻生首相靖国神社に真榊(まさかき)を奉納したことに不快感を表明した。歴史問題に敏感な中国の国民感情を意識したものだろう。

 これは誤報といってもいいがいわゆる確信犯的なものだろうな。
 ⇒日中首脳会談:「友好一色」ほど遠く 中国側、歴史認識でクギ - 毎日jp(毎日新聞)

 「歴史問題は非常に敏感であり、靖国問題は特に国民感情にかかわる。適切に処理してほしい」。温首相は29日の会談で、麻生首相靖国神社に真榊(まさかき)を奉納したことを念頭に、最近では珍しく「靖国」に言及した。

 「真榊」が背景にあったと見るのは間違いではないが、ここの外交的なポイントはむしろ「真榊」というキーワードを控えた点にある。
 このあたり、反北京勢力と日本の一部の勢力がふつうに滑ったというか、現状、東京も北京も靖国なんてのんきな問題に関わっている場合じゃないよということで、温としても麻生さんにもうちょっと大人になってほしいという窘める感じだったのだろう。

読売社説 日中首脳会談 上滑りする戦略的互恵関係 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 温首相は、「靖国問題国民感情にかかわる敏感な問題だ」と語った。麻生首相が、靖国神社の春季例大祭に真榊(まさかき)料を奉納したことを念頭に置いているのなら、あまりに過敏な反応ではないか。

 直接「真榊料」ということでなければ温の中国国内向けの配慮という以上の意味はないだろう。

朝日社説 IT摩擦―中国市場力の輝きと脅威 : asahi.com(朝日新聞社)

 IT(情報技術)セキュリティー製品を中国で製造したり、販売したりする企業に、技術情報の開示を義務づけようという「中国強制認証制度」(CCC)の適用問題だ。ICカードリーダーなど13品目が対象だ。
 この認証を得るためには、製品を制御する「ソースコード」と呼ばれるソフトの設計図の開示が求められる可能性が大きい。マイクロソフトが基本ソフト「ウィンドウズ」のソースコードを機密情報にしているように、企業にとって非常に重要な知的財産だ。

 この問題が今一つわからない。ごく簡単に言えば、どんだけ阿呆ですかみたいには見えるのだが、そう簡単な問題でもないように思う。

 この問題には、欧米諸国の反発も強く、中国政府は来年5月まで1年間実施を延期し、対象も政府調達の製品に限るとした。

 欧州と米国の問題も潜んでいる。
 こんな感じ⇒極東ブログ: 欧州裁判におけるマイクロソフト敗訴について
 そういえば⇒極東ブログ: マイクロソフト特許非係争(NAP)条項を巡って

朝日社説 新型インフル―長期戦の覚悟を持とう : asahi.com(朝日新聞社)

 ごくWHOをなぞった感じにちょい加えた社説かな。

今後の展開次第で長期に及ぶことも考えておかなければならない。

 これが微妙で、たぶん、豚インフルエンザは根絶できないというかすでに新しい段階に入っている。というか、識者の懸念はタミフルが効かないケースに移っているのではないかな。
 恐らく今回のインフルエンザは国内では根路銘先生の示唆のように五月に日本では小休止して、冬に暴発するだろう。ソ連型から考えると、たぶん全体が大きいのでメディア的に死者数が強調されるだろう。それを思うとちょっと鬱になりそうだが。

ざっと読んだが

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『こころ』は本当に名作か―正直者の名作案内 (新潮新書): 小谷野 敦
 まあ、近代文学についてはそういう見方もあるかなというと、英米文学というか洋物についてはごく普通の定見という感じはした。
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バカのための読書術 (ちくま新書): 小谷野 敦
 これを特化したような印象受けた。率直にいうと、これのほうがよいブックガイドかなとは思ったが。
 新潮新書のほうの標題は出版側で付けたのではないかと思うが、これで『こころ』は名作ではないという意見が広まるのかはよくわからないが、小谷野が同書で指摘しているように、亀井勝一郎から高校教科書というあたりの二次的な影響は大きいだろう。
 個人的には『こころ』については名作で、その解説の白眉、というほどまとまってはいないが、これ↓が、深い指摘になっているかとは思う。
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山本七平の日本の歴史〈上〉 (B選書): 山本 七平
 上巻の半分くらいだけ読むとよい。全体構図はとても難しい。山本七平イザヤ・ベンダサンというだけで読まれない人もいるだろうが、率直にいってその程度の反射行動を起こす人にはおよそ読める本ではないから別にどうということでもないだろう。
 ちょっと補足すると、イザヤ・ベンダサン漱石がわかれば日本人はわかると縷説していたが、どうも山本七平漱石をよく理解していない。ユーモアという点では理解しているが、どうも男女関係というか恋愛に対する感性の差のようなものが、ベンダサンと七平の間にあるようにも思えるというか、そのあたりで、同書もまた七平の議論とベンダサンの議論との奇妙にぎくしゃくとした感じはする。
 そこまで読まずとも、これ↓は全体構図についての、よい評論になっている。
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戦後日本の論点―山本七平の見た日本 (ちくま新書): 高澤 秀次
 すでに絶版かというのと、高澤がこの問題をこれ以上掘れそうにないのも読んでいてわかるのが残念ではある。
 話をもとの小谷野の新書に戻すと、おそらく「恋愛」と近代文学の関連に問うべきことが多いのだろうなとは察するが、いわゆる正統的なアカデミックな文学研究の志向と、そのわりに「日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で(水村美苗)」あたりへの時流的な色目的な視線には少し矛盾があるようには思える。小谷野自身が恋愛の文学に進んでいるあたりにも、ある意味で矛盾のようなものはあるかもしれないが、ちょっと言及しづらい。
 そういえば来週NHKでキーンのインタビューがある。それほどという内容はないと思うが、少し気になるので録画したい。