東京 東京新聞:木嶋被告死刑 裁判員の苦渋の選択:社説・コラム(TOKYO Web)

 日経の社説よりも優れている。

 死刑判決に至ったのは、死亡状況をそれぞれ詳細に検討し、まず三人とも「自殺の動機がなかった」「何者かに殺害された」ことなどを確認した。練炭などを入手していたのは、木嶋被告であり、「犯人は被告だ」との結論に達したのである。
 裁判長は殺害動機について「結婚するように装い、受け取った金の返済を免れるため」などと述べた。過去の事件でも状況証拠の積み重ねで有罪となった例はあり、今回も社会常識に照らして、被告が犯人であることに合理的な疑いを差し挟む余地がないと判断したわけだ。
 もっとも、この事件では問題点も露呈している。直接証拠がないということは、三件の殺人事件で初動捜査が不十分だったことを如実に示していよう。三都県の警察にまたがる事件で、一件は自殺と判断して遺体を司法解剖しなかった。もう一件も当初は事故死とみて、肝心の練炭など一部証拠物を押収していなかった。
 初期段階で捜査を尽くせば、もっと証拠は収集できたはずだ。科学的な捜査が重視される時代にあっては、証拠物が極めて重大な意味を持つ。犯人かどうかを見極める決定打となるケースもある。
 百日間もの大きな負担を裁判員に背負わせぬためにも、捜査の根本を再点検してほしい。

 ただし、本質的な問題は、証拠なくても死刑がありうるという前提でなければ、陪審員というのは意味を持たない。