大正生まれの日本人は……

 猫猫先生「方法」と「方法論」 - 猫を償うに猫をもってせよ

『新ゴー宣』で、天皇を本気で神だと信じていたのは、大東亜戦争時分に子供だった「小国民世代」だけだと書いてあった。これは興味深い指摘だ。同じように、明治43年までの日本人は、それほど天皇を崇拝すべき、畏怖すべき存在だとは思っていなかったのである。

 これは私の父(大正生まれ最後)の世代に人には当たり前のことだった。普通に「天ちゃん」とか言っていた。普通に、「あ、そう」とかギャグ飛ばしていた。「なるたん憲法」なんていう言葉もそのころの名残かもしれない。さらに普通に大正天皇は民衆から変に思われていた。
 このあたり、しかし嘆息したのは、「大東亜戦争時分に子供だった」吉本隆明かな。彼は学生時代、さすがに天皇を神と信じていたわけもないが、現人神というか理念には従っていた。山本七平との対話でもそのあたりがずれまくっていた。
 山本七平にしてみれば、天皇天皇制も擬制でしかなかった。
 ⇒「 静かなる細き声: 山本 七平: 本」

 明治的天皇制を私は、大したものだとは思っていない。ある意味ではニセモノだったと思っている。

 しかし、現人神の呪縛はあった。山本から見れば、吉本はいまだにその呪縛に解けていない下の世代に見えたのではないか。