日経社説 財政改革の道筋がかすむ福田予算

 日経らしい具体性がある。

 予算案の一般会計規模は83兆円強、国の政策経費である一般歳出は約47兆2800億円で、それぞれ0.2%、0.7%の増額となった。公共事業関係費を3.1%減、政府開発援助を4%減など、06年に小泉政権が決めた5年間の歳出削減方針に一応は沿っている。

 予算の中身を見ると、随所に理屈の通らないトリックが目立つ。典型が一般歳出の46%を占める社会保障関係費である。2200億円の抑制目標を果たすため、政府管掌健康保険に対する国庫負担を一部削り、ツケを民間の健康保険組合などに回した。政治力の強い日本医師会などが増額を求めた診療報酬本体は一方で0.38%引き上げる。
 つじつま合わせは文教予算も同じだ。族議員が「教育再生」を旗印に求めた小中学校教員の大量増員は、行革方針と矛盾しないよう非正規教員を増やすことなどで落ち着いた。いずれも医療や教育の「質」を巡る議論は置き去りのままだ。
 自治体に配分する地方交付税交付金は4.6%増える。財政力格差の是正を名目に設けた4000億円の地方再生対策費などが影響した。衆院選対策費と言い換えてもいいだろう。
 今年度の補正予算で削減を尻抜けにする例も目立つ。農林水産関係予算は08年度予算で700億円減らすが、補正で「水田農業等緊急活性化」と称して800億円を計上した。高齢者医療の負担上げを凍結する財源の1700億円も補正頼みだ。

 でも、それは国民が求めていたことでもある。