青石綿と国の規制についてメモ
(七) アスベスト使用の禁止を行うことに対しては、アスベスト製品メーカーの団体である日本石綿協会からの政府への要請も、鉄鋼、造船、自動車、電機、石油化学、ゼネコンなど大口使用のユーザである大企業からの「代替品ができるまで規制するな」との主張もあった。こうしたことを背景として、当時の通産省などが企業の働きかけでアスベスト規制に反対したために労働省や環境庁が使用禁止を打ち出せなかったのか、労働省が作業現場で「集塵機の設置」を義務づけるだけで使用禁止を主張しないために通産省等が輸入・販売・使用の禁止を怠ったのか、当時の環境庁がアスベストを規制すべき物質と考えなかったために労働省も通産省も使用禁止措置をとらなかったのか。
造船やゼネコンの要望に関しては、当時の運輸省や建設省がその業界の立場で使用禁止に反対したことが、労働省や環境庁の措置を遅らせることとなったのか。この時、省庁は、このことについてどのような対応を行ったのか。諸外国の措置に較べて、日本のアスベスト使用禁止など規制措置が遅れた原因はどこにあるのか、明らかにされたい。
(八) アスベストメーカーであるクボタは、一九七五年に青石綿の使用をやめたと発表している。そうだとすると、厚生省は一九九五年まで二十年間も特定化学物質等障害予防規則を改正して、青石綿と茶石綿の使用を禁止しようとしなかったことになる。アスベストメーカーが青石綿の輸入も使用も中止しているのに、逆に国が二十年間も青石綿の使用を認めてきた理由はいったい何か。
⇒衆議院議員吉井英勝君提出アスベスト(石綿)対策に関する質問に対する答弁書
(七)について
石綿の使用等の禁止措置については、例えばクロシドライト(青石綿)については、英国が昭和六十一年に全面禁止し、ドイツが同年、フランスが昭和六十三年に原則禁止したのに対し、我が国は平成七年に全面禁止としたが、行政指導等により平成元年には使用の実態がなくなっていたことを確認しており、ドイツ及びフランスでは禁止措置を講じた時点では依然クロシドライトの使用の実態があり、全面禁止としたのはそれぞれ平成五年及び平成六年であることにかんがみれば、実態面でみればドイツ及びフランスに遅れをとってはいないなど、我が国が諸外国に遅れをとっているとはいえない。なお、石綿の使用等の法的な禁止措置については、欧州諸国においては、我が国よりも早くから石綿を大量に使用し、多くの健康被害が発生していたという事情を背景として、独自の科学的検討に着手し我が国より早期に法的な禁止措置を実施している一方、我が国においては、国内における健康被害等の情報も少ない状況の下で、行政指導等により代替化を進めながら、国際労働機関、世界保健機関といった国際機関における勧告等を受けて法的な禁止措置の検討を行い、当該措置を講じてきたことから、欧州諸国との間に法的禁止措置の実施時期について違いが生じたものと考えられる。
また、石綿に係る関係省庁の施策に対して、当該施策の所管省庁以外の省庁がどのような見解を有し、どのような影響を与えたのか等について、現時点において把握していることは、アスベスト問題に関する関係閣僚による会合において平成十七年八月二十六日付けで取りまとめられた「アスベスト問題に関する政府の過去の対応の検証」により公表しているところである。
(八)について
クロシドライト(青石綿)については、昭和五十年に改正された特定化学物質等障害予防規則第一条の規定により、石綿を含む化学物質等について代替物の使用を努力義務とし、また、石綿の代替化の促進を内容とする「石綿粉じんによる健康障害予防対策の推進について」(昭和五十一年五月二十二日付け基発第四百八号労働省労働基準局長通達)を発出するなど、監督指導を通じて石綿の代替化の促進を図ったこと等により、クロシドライトの使用は減少していき、昭和五十八年及び昭和五十九年に実施した実態調査においては、全国で十一の事業場でクロシドライトの使用が確認されたが、平成元年に石綿製品を製造する事業場を対象として監督を実施した際に、クロシドライトを使用する事業場が存在しないことを確認した。
クロシドライトの使用等の法的禁止措置の実施については、右に述べた状況を踏まえ、平成元年に世界保健機関からクロシドライト及びアモサイト(茶石綿)の使用について禁止勧告が出されたことを受け、アモサイトの代替化の進展を待って、平成七年に労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)を改正し、アモサイトとともにクロシドライトの使用等を禁止したものである。