新しい存在

 私が傾倒した神学者ティリヒの神学の基本概念だ。これは難しいといえば難しい。英語でnew beingとか言っているのも奇妙な響きだ。
 ただ、難しくもないのかもしれない。
 私はじわじわと老いていく。死に向かっていく。この世界は、美しいといえば美しいが、死につつある私にその美の全貌を表してはくれない。もう、たぶん。
 だが、この世界のなかに、新しい子供たちが登場する。まるで無から人格が生まれ出る。なんと不思議なことだろうと思う。
 無ではないのかもしれないが、それでも、そこに現れる人間はやはり新しい存在だ。