朝日 河野談話―枝でなく、幹を見よう : 朝日新聞デジタル:社説

 松原氏らは、強制連行を示す資料が確認されないことを見直しの理由に挙げる。枝を見て幹を見ない態度と言うほかない。

 それはそう思う。

 河野談話を受けて、日本政府の主導で官民合同のアジア女性基金を設立し、元慰安婦に対して「償い金」を出してきた。それには歴代首相名のおわびの手紙も添えた。
 こうした取り組みが、韓国国内でほとんど知られていないのは残念だ。

 それもそう思う。

 5年前、当時の安倍首相は当局が人さらいのように慰安婦を連行する「狭義の強制性」はなかった、と発言した。
 その後、米下院や欧州議会慰安婦問題は「20世紀最悪の人身売買事件の一つ」として、日本政府に謝罪を求める決議を採択した。
 自らの歴史の過ちにきちんと向き合えない日本の政治に対する、国際社会の警鐘である。

 そこは朝日新聞の論理がおかしい。「歴史の過ち」と雑駁に考えるのではなく、この点については、「慰安婦を連行する「狭義の強制性」はなかった」については、確認できていないということ。
 その文脈で米下院や欧州議会慰安婦問題が謝罪を求めたという対象はというと、「狭義」ではない「広義の強制性」ということになる。
 朝日新聞は、「連行を含まない広義の強制性」として世界が認知したと理解しているだろうか? そこを明確しないから、一部でそこが問題になる。
 私は、「連行を含まない広義の強制性」が問題と考える。そしてその点について、韓国政府が個別補償を求めているのだと理解している。
 であれば、朝日新聞が力点を置いている、「日本政府の主導で官民合同のアジア女性基金を設立し、元慰安婦に対して「償い金」を出してきた。それには歴代首相名のおわびの手紙も添えた」は失当であり、韓国もそのように認識しているはずだ。
 日本政府は、「連行を含まない広義の強制性」について個別補償を行うのかというのが、この問題の現下の焦点であるはずだ。
 これまでの日本政府の一部、そして実質朝日新聞も以上のように見るなら、この問題を理解していない。あるいは、日本政府は、その個別補償は不要と見ているのだろうか。しかし、韓国の最高裁の判断が示され、それにそって韓国行政が動かざるをえない現状、日本政府がこれに明瞭な回答をしなければならないと思う。政府も一部ではその認識があり動いている部分がある(参照)。
 この補償は、慰安婦に限らず、韓国最高裁の動向を見てもあきらかだが、強制労働にも適用されている(参照)。その関連も明瞭にすべきだろう。手順としては仲裁委員会の設置が端緒になる(参照)。
 当然ながら、当時の韓国、つまり、朝鮮は、連合国の対応からみても明白に日本であり、以上の問題は、日本人への対応として示されなければならない。ということは、この時点で、すべての日本人への強制労働について国家がどのように個別補償をするかという問題であり、その論理が、戦後日本から分離した南北朝鮮にとってどのように理解されるかということである。別の言い方をすれば、慰安婦問題として韓国から提起されているが、根幹にあるのは、(1)非軍属の個別補償、(2)その外交的な明示、ということになる。