そういえば

 眠れないときは苦しむことにしている。二時間くらい続くならしかたないと思う。三時間くらいになるとけっこう苦しい。ただ、最近そこまではなく、未明を見ることもない。睡眠は浅いが、眠るには眠っている。
 眠る兆候は、普通の人は「眠い」ということなんだろうが、私の場合、ある奇妙な不快感がある。何にも関わりたくない。思念に関わりたくない。不愉快だみたいな感覚から意識が眠りに消えていく。この不愉快な感じが苛立ちなのかそうではないのかというのがよくわからない。ただ、そういう傾向がある。
 が、昨晩、眠れないでいたのだが、ふっと静かい意識が弱く、安らかに消えていく感じがあった。ああ、これは死ぬんだろうなとそのとき思った。私にとって死の恐怖はなんども書いてきたが強烈なものだ。だが、昨晩はそうでもなかった。静かに自分の意識が黒い小さな点のようになって死んでいく感じだった。痛くもないし、もう生きていてもさして意味もないから、このまま静かに死んでいくのもいいんじゃないかというとの、恐怖ともちょっと違うがやだなあ、もう死んじゃうのか僕はという葛藤が起きたい。どっちにするか心が揺れているなかで、一端意識を覚醒させ、不愉快のレベルに戻した。しばらくして寝た。あの小さな黒い点のように意識が縮退していく感じはなんだったのだろうか。また来るんだろうか。