朝日 竹島提訴―大局に立つ日韓関係を : 朝日新聞デジタル:社説

 日本政府は1965年の日韓協定で解決済みとの立場だが、93年の官房長官談話で旧日本軍の関与を認め、謝罪した。民間主導のアジア女性基金を通じ、償い事業も行った。
 そうした努力自体は韓国の人たちにも理解してもらいたい。その上で、まだ出来ることがあるのか、両国で考えればいい。

 すまん、コーヒー吹いた。「両国で」って、中国様、出てますって。ここは日本の朝日新聞ですよ。

 残念なのは、日本側で歴史認識への疑問を呼び覚ますような言動が繰り返されることだ。
 2007年には当時の安倍晋三首相が、当局が無理やり連行する「狭義の強制性」はなかったと主張。米下院が日本に謝罪を求める決議を採択するなど、国際社会で強い批判を浴びた。

 これねえ。
 ⇒衆議院議員辻元清美君提出安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問に対する答弁書

一の1から3までについて
 お尋ねは、「強制性」の定義に関連するものであるが、慰安婦問題については、政府において、平成三年十二月から平成五年八月まで関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、同月四日の内閣官房長官談話(以下「官房長官談話」という。)のとおりとなったものである。また、同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。

 これ、安倍元首相の創見ではなく、平成五年時点の政府見解を問われて明瞭化したというだけの話に読めるが。つまり、安倍元首相が変更したというより、政府側はそう認識していたということではないのか、いずれ官僚答弁だろうし。
 「米下院が日本に謝罪を求める決議を採択」は、広義の「強制性」ということで、これはこれで正しいで、朝日新聞のこの議論は噛み合っていない。というか、
 なによりも、「残念なのは、日本側で歴史認識への疑問を呼び覚ますような言動が繰り返されることだ」というけど、日本政府の立場は河野談話から実は一歩も動いていない。安倍政権以降の福田首相時代でもそう。
 余談だけど、河野談話閣議決定ではない

三の1について
官房長官談話は、閣議決定はされていないが、歴代の内閣が継承しているものである。
三の2について
 政府の基本的立場は、官房長官談話を継承しているというものであり、その内容を閣議決定することは考えていない。

 この問題だけど、広義の「強制性」という点で日本政府は認めており、それに道義的な対応をしてきたのが経緯。それを法的に扱うかについてはまた別の議論で、これについては未決。また、「狭義の強制性」があるかについても議論の経緯ではあまり明確になっていない。
 韓国側での最高裁判決が韓国政府に行動を促している点については、日本政府も配慮しないといけないが(自民党政権だったら対処していたのではないかな)、これは竹島問題とは別。日本側としては戦争に関連する賠償は済んだとしているが、韓国司法判断は異なるのでこれについては韓国政府と協議する必要はある。その場合、「強制性」がどうとかいう議論ではなく、敗戦処理の一環になる。
 だから朝日新聞社説のこれ

 日本政府は1965年の日韓協定で解決済みとの立場だが、93年の官房長官談話で旧日本軍の関与を認め、謝罪した。民間主導のアジア女性基金を通じ、償い事業も行った。
 そうした努力自体は韓国の人たちにも理解してもらいたい。その上で、まだ出来ることがあるのか、両国で考えればいい。

 「その上で」というのは旧来からの日本の立場の押しつけになってしまうのだけど。
 余談。
 ちなみに、国連=連合国の扱いからわかるが、戦中までの朝鮮は日本の一部なので、基本的に日本国民に対する補償を、その後の韓国独立に合わせての外交手順になるのではないかと思う。とすると、国内補償との釣り合いが問われるように思うが、日本人慰安婦についてはどういう補償だったのだろうか。ついでに連想だが、台湾人の戦死兵に対して日本政府は補償してなかったと記憶している。90年代にこれも問題化して、弔慰金になった。こうした問題はまず、台湾兵への補償から始めてはどうかと思う。