没エントリ

 尖閣ビデオ流出問題で投稿者の投稿場所が神戸のネットカフェであると東京地検が発表した。ブログのエントリーとしては"犯人"の逮捕まで待つか悩むところだが現時点でいろいろ思うこともあるので書いておきたい。
 現下の大勢の疑問としては"犯人"が捕まるかということだが、流れを見ていると手口が妙に素人臭いのでネットカフェの情報から見つかるのではないかとも思う。が、逆にその手の現場証拠がいくらあってもホシをあげられないのが警察の常なので、意外と迷宮入りになる可能性もあるかとは思う。わからないとしかいえない。いずれにせよ、IT技術的な問題ではなさそうだ。
 それなりに警察が仕事をして、"犯人"側がもし「こりゃ詰んだな」と思うようだったら男子の本懐と潔くお縄になる前に(女子の本懐かもしれないが)、自分の思いをユーチューブに投稿すればよいだろうなと夢想する。もちろん、その手の偽装映像もいろいろ出てくる可能性はあるが、いずれ"犯人"が警察情報と照合されてたとき「ああこいつは本物だったのか」とわかるようにすればよいだろう。
 刑もかなり軽減されるだろう。すでに公開されている"極秘"仙谷文書(参照)でも、「流出犯人が検挙・起訴された場合、「政府が一般公開に応じたのだから、非公開の必要性は低かった」と主張し、量刑が下がるおそれがある」とあると政府側も理解している。
 今回の騒ぎで個人的に興味深かったのは、福岡高検がグーグル側に投稿者に関する記録を照会し、これをグーグルが顧客情報の任意提出と見なして拒絶したことだった。おそらく日本の慣例ではそこで話が終わっていたのだろうと思う。
 今回はその先に歩を進めるために、裁判所の令状を取って記録を差し押さえることになったわけだが、グーグル側としても当初から差し押さえ令状の範囲内で協力するとしているので、令状が出てその範囲が明確になった以上、それ以上の拒否はできなかっただろう。
 現実のところ、ユーチューブはジャーナリズムのシステムとして意識してグーグルが運営しているわけでもないし、ホスト国に正式拠点を置いて運営している以上、遵法ではあるべきだろう。ただ、ウィキリークスのように新しいジャーナリズムを標榜している代替があればという思いは残る。代わりといえかどうかわからないが、産経新聞のサイトではまったく同じ映像がテロップは追加されているが基本的にはそのままの形状で掲載されていて微笑ましい(参照)。
 今回の「押収」で個人的に技術面で興味があったのは、ユーチューブのサーバーの設置位置は日本国とは限らないのに投稿記録を押収できるものかという疑問だった。結果からすると「押収」されたのだから日本国内にサーバーがあるんでしょとも言えないこともないが、そこがよくわからないところだ。
 ハッキングの解析ならインターネットエクスチェンジ(IX: Internet eXchange)との関係を見ることになるだろうから、今回もグーグルとの関係でそういう解析になったのだろうか。あるいは多くのトラフィックを担うグーグルのことだから国内用の専用キャッシュを持っていただろうとも思うので、そこからの情報だろうか。いずれにせよ、投稿時のルートについて日本側のグーグルがどのように把握していたのか、その仕組みは知りたいところだ。
 というか、日本側のグーグルの問題ではなく、米国本社側で日本からのIPの投稿についていつでも提出可能だったと考えるほうが自然に思える。
 そう考えると、私はつい小沢事務所の資料を押収するといったれいのものものしいイメージで勘違いしていたのだが、グーグルからの「押収」といっても、窓口で「令状はありますか」「令状範囲を確認しました。では、はい」とバインダーが一冊渡されてこれを段ボールに入れて運んだというくらいのことだったのだろう。NHKのニュースでも段ボールは一個だったように見えた。
 推論が少し逆向きになるのだが、今回の、グーグル側の「令状の範囲内で協力」というとき、グーグルが対応できる「令状の範囲」は検察側でも了解されていてそれにグーグル側でも用意されたマニュアル的に対応したいうことなのだろう。まあ、たいして面白い話でもないな。
 いずれにせよグーグルとしては投稿の手法、よく多段串と言われるが、代理サーバーを介したかパソコン機器固有番号を偽装するかといった点にはまったく無関心で、一時的に日本ドメインからのログというのはさっと検索できるように対応しているのだろう。
 神戸のネットカフェだろうとする解析の速度が速く、介在した多段の代理サーバーの紹介ということもなさそうなので、ルート解析の必要もなく、この間議論されていたような高度な技術背景はないだろう。
 そもそも、深夜に投稿し朝に消去した点で、当局側はネットカフェとにらんでいたのだろう。その反映が、グーグル押収までの沖縄ネットカフェ捜査だったのだろう。9日付け時事「流出前後の防犯カメラ要請=ネットカフェ対象に−ビデオ事件で沖縄県警」(参照)より。


 関係者によると、捜査員は9日までに、那覇市内のネットカフェや運営会社数カ所を訪れ、3日から5日の防犯カメラ映像や利用客の履歴などの提出を依頼した。
 捜査関係者によると、ネットカフェのほかにホテルなどにも対象を広げる可能性があるという。
 衝突ビデオ映像が動画サイト「ユーチューブ」に公開されたのは4日午後9時前。県警はビデオ映像がネットカフェから投稿された疑いもあるとみて、公開前後の各店の利用状況を調べているとみられる。
 沖縄県警なので沖縄でのネットカフェを調べたということもあるだろうが、やりながら不毛間もあったには違いなく、神戸のネットカフェということで沖縄関係者はほっとしているだろう。