毎日新聞社説 社説:イラクの7年 戦争から平和の時代に - 毎日jp(毎日新聞)

 オバマ政権も早く「負の遺産」を清算したいだろう。「大量破壊兵器の脅威」を大義として侵攻しながら、イラクで同種の兵器を発見できなかったブッシュ政権イラク戦争前、パウエル国務長官(当時)が国連安保理で説明したイラクの「移動式生物兵器製造施設」も、イラク人協力者のでっち上げと判明した。
 いかにブッシュ政権フセイン政権を倒した意義を強調しようと、お粗末な「証拠」と論理で他国を攻撃し、罪のない多くの人々の命を奪った事実を消すことはできない。

 「民主化」について主に米欧が反省すべき問題もある。ブッシュ政権は「大量破壊兵器」とともに「中東民主化」を戦争の大きな理由とした。民主化といえば聞こえはいいが、意に沿わない国の体制打倒(レジーム・チェンジ)を含みとした「民主化」では、イスラム世界が「価値観の強要」と警戒しても無理はない。

 フセイン独裁が続いていたら、国連不正の陰で民衆の悲惨は続いた。露仏もその構造に乗り続けた。フセイン大統領下ではクルド人を筆頭に多くの人が虐殺された。フセイン大統領下でも「罪のない多くの人々の命を奪った事実」は継続していた。民主主義移行の萌芽はまったくなく、また大量破壊兵器は発見されないまでも核化への着手の歴史は暴露された。独裁はフセイン氏から息子に委譲されつつあり、恐怖のレジームはそれなりに固まりつつあった。さらにサウジを押さえ込み中東の盟主たらんとしていた。イスラエルにミサイルを撃ち込みもした。フセイン体制が崩壊したときのイラク人の喜びは、いくばくかは米国の仕込みもあっただろうが、米国へのイラク難民の様子からはその真実もあった。
 だからといってイラク戦争が正しいわけではない。戦後処理という点では下手な戦争でもあった。ただ、歴史は毎日新聞社説が説くほど単純なものではない。
 ⇒Charles Krauthammer - History Will Judge - washingtonpost.com