日経社説 鳩山政権は対米政策で「君子豹変」せよ

 野党時代に民主党がとった態度のうち、日米関係に否定的な影響を与える問題が少なくとも4つある。
 順不同であげれば、第一に、インド洋での海上自衛隊による給油活動反対である。第二に、沖縄の普天間基地の県外移設を求めた点である。第三に「思いやり予算」と呼ばれる在日米軍に対する日本側負担への反対である。第四に、日米地位協定の改定を求めた点である。

 再度⇒民主党政権への米英紙の関心は日米同盟: 極東ブログ
 話戻して。

 これら4点以上に深刻なのは、外相候補とされる岡田克也幹事長が、核の先制不使用の宣言を米国に求めると発言してきた点だ。現時点では日米関係というよりも、日本の安全それ自体に有害な提案である。

 確かに米国とロシアのように、核弾頭数が均衡し、核攻撃によって失うものが多いと自覚する国々の関係では、先制攻撃よりも第2撃能力によって核抑止が維持される。仮に米国がモスクワ攻撃を宣言すれば、ロシアは数分後に第2撃を放ち、ニューヨークを消滅させる。双方に損失が大きい。だから核攻撃はしない。これが核抑止理論である。
 しかし北朝鮮のように、失うものへの自覚が不明確な国には、それは通じにくい。北朝鮮が東京を核攻撃すると宣言し、米国が先制不使用の原則に縛られる場合の対応は「東京を消滅させれば、数分後に平壌が消滅する」と警告するにとどまる。日米の通常戦力が上回るにせよ、これで日本は安心できるだろうか。
 北朝鮮が東京攻撃を宣言した場合に、米国による先制攻撃が想定されなければ、日本の安心・安全は保てない。米国が先制不使用を宣言すれば、北朝鮮のような国やテロリストへの核拡散を誘発し、日本核武装論を勢いづける危険もある。
 中国は先制不使用を宣言したが、実際の核配備がそれに見合っているか、検証は認めない。先制不使用は実は「軍縮の論理」ではない。

 これは核廃絶がどうという理想論じゃなくて、現実のフレームだった。もちろん、そのフレームを変える必要があるけど、それこそ全体構成を変えるヴィジョンがないと、どうにもならん。