毎日社説 社説:’09衆院選 農業政策 抜本改革の視点示せ - 毎日jp(毎日新聞)

 民主党の所得補償政策は、幅広い農畜産物について、販売価格が生産コストを下回った場合、その差額を農家に補てんするものだ。「バラマキ」との批判が強いが、米欧の農業政策は90年代以降、価格支持(下支え)型から所得補償型にシフトしている。ウルグアイ・ラウンド(先の多角的貿易交渉)などで貿易の自由化が進み、コストの低い途上国との競争が激化して価格支持政策が効かなくなってきたからだ。
 これに対し、日本の農政はまだ価格支持型が基本だ。その典型はコメで、国内での生産調整(減反)と輸入米への高関税(778%)が米価を下支えしている。来年中の合意を目指すドーハ・ラウンドで日本は大幅な関税引き下げを迫られており、その意味では所得補償の導入は理にかなっている。

 これは基本でもあるのだが、民主党はここでぶれて崩れてしまったのが問題。

 ただ、日本農業は構造的な問題を抱えている。日本の農業就業人口は約290万人だが、ほぼ半数が70歳以上だ。新規就農者は年間7万人程度しかおらず、農家数の減少が今後、加速していくことは必至だ。引退する高齢者の農地を意欲ある若手農家に集め、規模拡大によるコスト削減を進めることが急務になっている。経営規模や担い手としての将来性の差を無視し、一律に所得を補償する民主党の政策は不効率な農業構造を温存しかねず、結局はバラマキ批判を免れない。

 この指摘は概ね正しい。ただ、もうちょっというと、「日本の農業就業人口は約290万人だが、ほぼ半数が70歳以上だ」の国民保護の問題と、今後の農業を切り分ける必要はある。ただ、手順的には前者が先。このあたりは、自民党もわかってないわけでもない。

 同じ批判は自民党にも当てはまる。「国内農林業の所得増大」をうたう同党のマニフェストには「農地をフル活用」「国民の求める農産物を安定供給」といった総花的なスローガンが並ぶが、具体策はほとんど示されていない。

 これはちょっとタメな批判。与党なので実績・実態を見るしかない。

 民主党は国内農業に厳しい試練をもたらす日米自由貿易協定(FTA)締結をマニフェストにうたい、自民党や農業団体の批判を受けて修正に追い込まれた。お粗末なエピソードだが、そんな揚げ足の取り合いより、日本農業の将来を見据えた抜本改革を打ち出すことこそ政権を担おうとする政党の責任であるはずだ。

 「そんな揚げ足の取り合いより」がいかにも政治志向。そこが個別の政策で重要なところ。それと「抜本改革を打ち出す」幻想が問題の基本、つまり、国民保護を理解していないことになる。