朝日社説 総務相辞任―剣が峰に立った麻生政権 : asahi.com(朝日新聞社)

 多方面に考察した跡が感じられ朝日新聞の社説としてはよく書けている部類ではないかと思った。

 鳩山氏は過去3回の自民党総裁選で首相の選挙対策本部長を務めた盟友である。それなのに首相の意に沿わせることができず、逆に政権の傷口を広げてしまった。
 党内基盤のもともと弱い麻生政権を支えてきたのは、4年前の郵政総選挙で得た巨大議席だった。その首相の誤算は、郵政をめぐる党内対立の根深さを甘く見過ぎたことだった。
 首相は2月、「郵政民営化に賛成じゃなかった」と語り、4分社化の見直しにも言及した。首相就任以来、小泉元首相の改革路線に対する党内や社会の風当たりの強さを見て、ハンドルを戻そうとの思惑だったのだろう。

 執筆子もお子様ではないからこの文章の裏の含意は考えているだろうし、そのあたりのにじみ感が面白い。含意だが、鳩山は麻生の鉄砲玉を買って出たのだろう。麻生としても、総選挙用に、反小泉路線の大衆扇動の空気醸成ができるかにかなり賭け金を積み上げたはずだ。ただ、この賭けに勝てるとは踏んではいない。麻生には小泉のようなタイプの信念もカリスマもない。どこで賭け回収を見ていたかだが、私の印象では中川秀直の放逐ではないか。この援護に実質鳩ポが回ったのが暗示的だが、総選挙後に民主宣撫で大連立の路線という読み筋が一番ありそうだ。言うまでもないが、今回のどたばたで民主党は何もできなかった。麻生総理の指導力が問われるくらいの批判はタメでしかない。小沢がすっこんだからということはないだろう。小沢もこの問題には動けなかったし、国民新党を抱えて静観だった。
 軸を、総選挙にとるか、郵政がらみの権力闘争にとるかで、見方は変わる。後者が根にあるのは確か(西川をすげ替えたいだろう)だし、検察にも検察なりの鬱積がだいぶあるだろう(それで小沢で滑ったりもした)。ちょっと陰謀論めくが、筋で見るなら、不正ダイレクトメール事件は民主党攻撃第二弾の弾なのだろうが、どの時点でどう炸裂させるか、あるいはさらに別のオリックスがらみの変なスキャンダル弾をどっかが繰り出すかだが、そのあたりは、どうも前者の推移を見ていると、麻生政権と、総選挙後の政権との微妙な空気読みコミュニケーションがありそうだ。小沢の件でも、下手に駒を動かすと強烈なブーメランになりかねない。
 とりあえずの局面で言えば、この笑劇は総選挙がらみだろう。その背景は、ごく単純に言って小泉チルドレンの一掃にある。これはもう自然現象みたいなものでどうしようもない。小泉が歴史の反動で残した2/3宝刀を小泉は理解して抜かなかったが、麻生はもうこれに頼るしかない。この己を捨ててなんでもやる姿は麻生さんの偉いところだが、宝刀はもうなくなる。自民党には、かなりの可能性で総選挙後には、力はない。もう一点、麻生さんが偉いなと思うのは、そのシーンにおいて総理をやるだけの気概がありそうだということで、まあ、読み筋では先に触れた大連立あたりだろうが。
 小泉チルドレンはいずれ消える。これで中川秀を放逐して、自民党穴熊になるか、つまり、小泉以前の自民党体制再構築の礎石になるかという賭けだったのだろうが、まあ、そう見てよさそうだし与謝野もその路線に希望を見ているだろうが、さて麻生さんこの賭けに負けたか。鳩山が体力ある割に阿呆だったというのはしかたがないが、どうもそううまく行っていない。このあたりで手仕舞いがよかろうというのがこの笑劇だろう。後任も準備できていただろうし。
 マスコミが(率直に言うとこれは団塊世代の宿痾というべきでもあるが)、民主党主軸の政権交代のお花畑を夢みていて、なかなか政権・官僚側からはいまいち使えない。官僚というか各種財団とかの動きもよく見えない。官僚側もそろそろ二股状態だろうし。
 見えない部分は多いが、根(郵政がらみの権力闘争)は残るだろうし、全体の動き(小泉チルドレンの終わり)といった部分は動かないし、検察爆弾や思わぬスキャンダルといった動きが大衆の空気を動かすひやひやした状況は続くだろう。