今日の一冊 「第七官界彷徨」尾崎翠
⇒吉行和子さんの私の1冊「第七官界彷徨」尾崎翠 | NHK 私の1冊 日本の100冊
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が、吉行和子の描き方は、ある意味、見事だった。あれはなんなのだろう、吉行和子なら当然出てくると予想された表層はすべて裏切られて、そしてそれでいてほぼ完全な含蓄を持っていた。
⇒尾崎翠 - Wikipedia
尾崎 翠(おさき みどり、1896年12月20日 - 1971年7月8日)は小説家。 作家活動は短かったが、今なお斬新さを失わぬ彼女の作品は、近年になり再評価が進んでいる。
私が尾崎翠の名を知っているのは、今思うと彼女が比較的長命であったからかもしれない。74歳を長命というのは変だが、作品の連想からは早世がイメージされていた。
ここに林芙美子が出てくる。彼女は日本近代文学史の巨星であって、ある意味でそれに比べれば、「福沢諭吉、二葉亭四迷、夏目漱石、森鴎外、幸田露伴、谷崎潤一郎」などは擬制にすぎない、まあそれも言い過ぎだが。
1931年、「文学党員」に『第七官界彷徨』の半分強が掲載され、板垣鷹穂に求められて「新興芸術研究」に全篇を掲載。短篇「歩行」も発表。
1932年、短篇「こほろぎ嬢」「地下室アントンの一夜」発表。心身ともに変調をきたし、故郷の神経科で療養。
1933年、『第七官界彷徨』刊。
1941年を最後に書いたものを発表しなくなる。
そう見ると、第七官界彷徨の重要性がわかるといえばわかる。
番組では44年に再評価されたと聞いたように思い、え?と思ったが、昭和44年だろう。
ぶっちゃけていえば、花田清輝である。平野謙については微妙だ。
花田清輝について私は選集を読んだことがある。いろいろ思う。吉本との論争の意味もわからないではない。最近の吉本は実は花田を意外と評価しているようなことも言っていた。
花田は吉本の言うことは通じなかっただろう。私は渋澤龍彦の選集(2種ある)もほぼ全部読んだ。彼は花田に傾倒していた。花田に傾倒せざるをえない、戦後文学インテリの類型とういものがある。
そしておそらく、尾崎翠はそう読まれるのだろう。
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⇒吉行エイスケ - Wikipedia
吉行エイスケ(よしゆきエイスケ、本名:栄助、1906年5月10日 - 1940年7月8日)は、日本のダダイスト詩人、小説家。
1934年 文筆活動を辞め、株式を生業とする。
第七官界彷徨が刊行された翌年である。
ある意味で、和子は父をその時代のなかで語っていたともいえるのだが、その陰影の読み取りは難しい。公平にいえば、あまりその陰影は濃くはないだろうし、強調することで吉行の血統の持つ怖さみたいなものの目測をはずすだろう。
追記
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