Yes you can

 ⇒The Associated Press: President-elect Barack Obama's remarks in Chicago

OBAMA: When the bombs fell on our harbor and tyranny threatened the world, she was there to witness a generation rise to greatness and a democracy was saved. Yes we can.
 
AUDIENCE: Yes we can.

 ⇒「アメリカに変化がやってきた」 オバマ次期米大統領の勝利演説・全文翻訳 <特集・米大統領選>(gooニュース) - goo ニュース

この国の湾に爆弾が落下し、独裁が世界を支配しようとしたとき、時の国民が立ち上がり、偉業を達成し、そして民主主義を救うのをクーパーさんは見ていました。Yes we can。私たちにはできるのです。

 補足すると。

この国の真珠湾に爆弾が落下し、日本の独裁が世界を恐怖で支配しようとしたとき、時の国民が立ち上がり、偉業を達成し、そして民主主義を救うのをクーパーさんは見ていました。Yes we can。私たちにはできるのです。

 偉業に含まれるもの⇒Necessary Evil (aircraft) - Wikipedia, the free encyclopedia
 
 ついでに。

OBAMA: She was there for the buses in Montgomery, the hoses in Birmingham, a bridge in Selma, and a preacher from Atlanta who told a people that We Shall Overcome. Yes we can.
 
AUDIENCE: Yes we can.

YouTube - Joan Baez - We shall overcome
 

追記
 ⇒404 Blog Not Found:The enemy we share

確かに"the harbor"が真珠湾であることは間違いない。しかしtyrannyが指しているのは、「日本の独裁」じゃないよ。主としてナチス。少し広げて枢軸国。スターリンも入っているかも知れない。

 真珠湾があって、その文脈で tyranny が来ているのに、「日本の独裁」じゃないという読みは、いかがなものかですよ。 tyranny という言葉は、「専制政治」を意味する。米国人にとってこれは暴君(tyrant)の存在が前提になる。そして彼らの目から見て、当時の日本には、tyrantとしての東條英機がいた(天皇もそう見られることがある)。
 くどいけど、米人にとって、東條英機はtyrantであり、だから、当時の日本はtyrannyと見られている。
 話を戻して。

ここ、あえてぼかしてるんだよ。

 コメント欄参照のこと⇒http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20081106/1225972453#c1226016612

これこそが、ドイツや日本を彼が"they"でないと見なしている証拠だと、私は見た。

 だったらあんな不自然なスピーチの文脈は書かないって。

もしsharedでなかったら、彼は Pearl Harbor と言ったはず。
では、彼の敵とは誰だろう。
本当に彼の道程を追ってきたなら、わかるはず。

 ちょっときついこと言うと、この言い方は煽動者のそれだよ。そして、これに続く文脈が論理的なつながっていない。
 それはそれとして。

Cynicism, fear, and doubt.
冷笑、恐怖、疑念。
彼の敵は、イラクアフガニスタンウォール街ではなく、自分たちの内側にあるものなのだ。
我々の内側にも、それはある。
だからこそ、この敵に対して、わたしたちは共に戦うことができる。

 原文では、"cynical, and fearful, and doubtful"ですよ。
 で。
 私はcynicalだ。なぜなら私は権力をおちょくって笑いたいからだ。笑いこそが力なきものの最後の心のよりどころだ。
 私はfearfulだ。なぜなら私は弱いからだ。バフェットですら、みんなが強気なときは、fearfulになると言っている。⇒極東ブログ: ウォーレン・バフェットのありがたいご託宣
 私はdoubtfulだ。たいていのことをすんなりと受け入れることはない。オバマイラク戦略は実質的にはこけていのたにマケインに救われたな、こいつそれほど軍事センスないんじゃないか、と、doubtfulだ。
 ついでに。
 私が好きなフィナンシャルタイムズ⇒オバマと空っぽなレトリックという技――フィナンシャル・タイムズ(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース

そしてさらに、例の「Yes we can(私たちにはできる)」というあれだが。

私に言わせればこれは、「偉大な演説はこういうものだと頭の中で考えたものを、なぞっている人」を浮き彫りにした演説だ。いつもなら、まさにこういう空疎な大言壮語こそ、良くない政治家の象徴のはずだ。

 とはいえ。

つまりオバマ氏は別に、空疎なレトリックを振りまくしか能がないから、そうしているわけではない。彼は政治戦略として、わざとそうしているのだし、その判断はまともだ。

 まあ、そうだと思う。
 振り回されているほうについては以下略としたい。
 
追記
 ⇒はてなブックマーク - 404 Blog Not Found:The enemy we share

2008年11月07日 steam_heart なるほど。翻訳者が元の文意を変えてしまう好例。

 文意は変えてないよ、補足しただけ。

2008年11月07日 maachan1977 dankogai 超同意。「民主党=アンチ日本」のテンプレが脳内に出来上がっているとああ聞こえるんだろうな。

 私の脳内はこう⇒極東ブログ: 米国大統領はオバマでもいいんじゃないの
 そんなテンプレはないよ。

2008年11月07日 mitsuki_engawa Overseas こっちの解釈が自然。米国は太平洋でだけ戦争してたわけじゃないし、東條は「独裁者」というにはちょっと「弱い」。

 それは日本人の感覚。
 米人はこう⇒WikiAnswers - Why was Hideki Tojo considered a tyrant
 あるいはこう⇒What is an American? (Letters to the Editor). - Free Online Library

This is an excerpt from a Veterans Day speech delivered by Major General (Retired) Leo Leo J. Baxter, Lawton, Oklahoma, a former Chief of Field Artillery. He reports that his definition of an American was inspired by an anonymous definition that appeared on the internet in the wake of the terrorist attacks of September 11th.

So you can try to kill an American if you must. Hitler did. So did General Tojo, and Stalin, and Mao Tse-Tung, and every bloodthirsty tyrant in the history of the world.

 史学的な評価ではなく、民衆の意識としてね。
 

追記
 弾さんのエントリのぶコメとか見ていると、まあ、日本も平和になったものだ、めでたし、めでたし。
 でも、あれだな、憲法も読まれてないな、と私は思ったね。
 ⇒極東ブログ: 試訳憲法前文、ただし直訳風

【第6文】
We desire to occupy an honored place in an international society striving for the preservation of peace, and the banishment of tyranny and slavery, oppression and intolerance for all time from the earth.

 なんでここにtyrannyが登場しているかわかる?
 もちろん、ここでは直接戦時下の日本を指していないけど。
 けどというのは。

【第1文】
resolved that never again shall we be visited with the horrors of war through the action of government, do proclaim that sovereign power resides with the people and do firmly establish this Constitution.

 このgovermentというのは、一般的な含みもあるけど、歴史的な含みとしては戦時下の独裁政府のこと(行政府だから、その長たる東條英機独裁が問われるということね、米人的にはね)。ほいで、日本国民である我々は、その独裁政府によって戦争の恐怖を味わわされた被害者だよ、と。だから、そういう独裁政治がないようにこの憲法を作りますよ、と(実際は自分たちで草稿を作ったとは言い難いが)。
 そしてこの裏にあるのは、独裁政治から我々日本国民を解放してくれたアメリカ様ありがとう!ということ。
 憲法前文を読み返してから、オバマのあの文章を読み返してごらんなさいな。