騙す神

 私が聖書が好きな理由は、そこに描かれる神が、チャーミングだからというのがある。
 特にエレミアと神の関係。
 エレミアは神に騙されたと言う。
 そして神にぐだぐだ愚痴を言う。
 あれはいいなと思う。
 ヨナもそう。
 神に騙されて、人から世界からひどい目に合う。
 イザヤもそうか。
 エリヤもそう。
 神を探して、嵐のなかや火のなかを探し求めて、そこに神がいないことを知る。で、疲れて呆然としているとき、神は静かに語る。「おまえ、何やってんの?」それはないだろ。
 ヨブの場合は悲惨でもある。人の世の悲惨を授けられる。
 私は、こういう神が好きだ。
 私は、たぶん、ひねくれ者だからだろう。
 サラはこっそり神を嘲笑した。そして、その笑いを得た。
 イエスも神から見放された。
 この世はイエスに勝った。
 ヤコブも神と相撲して神に勝った。
 神はけちょんけちょんに負ける。
 ってなことを言うとクリスチャンは嫌がるだろうけど、みんな聖書に書いてある。
 神がどういうものか、自分で思い描かず、べたに聖書を読んでいけば、そこに現れるくっきりとした神というものがある。
 それを信じるかどうかは信仰の問題だろう。
 私は、信じない。
 でも、こういう神が好きだなと思っている。
 
 聖書には書かれていないが、現存の聖書の形を作ったのは、アキバだろう。
 アキバは焼きごてを当てられつつ死んでいったと言われている。そして、シェマーを唱えた。
 アキバは若い性欲豊かな青年だったと言う。
 恋した娘のとっつぁんがラビだったのが運の尽き。
 よいラビになったら娘と結婚してよいということで、ラビになった。そして大ラビに。
 私は、雅歌を選択したのはアキバだろうと思う。あるいは控えめにいってアキバのような経験に擬されている恋情があると思う。
 アキバの若い日の恋のなかに、聖書として統合される神が現れたと私は思う。
 
 ⇒アキバ・ベン・ヨセフ - Wikipedia
 ⇒Akiba ben Joseph - Wikipedia, the free encyclopedia
 欧米圏ではよく知られている伝説っぽい⇒Akiba and his wife : Akiba ben Joseph - Wikipedia, the free encyclopedia