朝日社説 元公安長官起訴―異例ずくめの展開だ

 元長官らは競売逃れのために、総連側と共謀して偽装売買を図ったのではないか。それが異例の早さで捜査に乗り出した地検の当初の見立てだった。

 本部の土地と建物について架空の購入話を総連側に持ちかけて、登記簿の所有権を移転させたというのが起訴の内容だ。さらに交渉の過程で約4億8000万円をだまし取ったというのが、新たな逮捕容疑である。

 ところが、地検にとって都合の悪いことが起きる。総連幹部が記者会見で「だまされたという認識はない」と述べたのだ。「取引が不当であるかのように報道されて破綻(はたん)した」とも語った。これは加害者とされた元長官の弁明と同じだ。

 大枠で見れば誰が得したかというところで絵を描いた人の賢さがわかるような、あるいはただのスラップスティックか。この物語はまだ続きそうなので推移を見ていけばいいのではないか。