恋をしている感覚

 恋というのはなにかしら狂気めいたものがあり、世界の認識が変わる。ただ、誰もが自分の恋というのをうまく理解できない。それはまず身体を巻き込むように世界が変わる。そして、その恋とやらが終わるとき、身体が引きちぎられるようにまた世界が鉛の彫像のようになってしまう。
 それがなんどか、おそらく数回だろうが、繰り返されると、人は世界と他者に奇妙な対応を取るようになるというか、ほのかに定常的な狂気を抱え込んでしまうように思える。
 この恋のような何かがゆるく続く愛情のようなものに変成するのかもよくわからない。
 ただ、これは親子関係というか原初的な性を含んだ愛の関係の病理と関係しているのだろうとは思う。その意味で、恋の感覚は、反復の病理を本質としているのではないかと思う。
 自分はそうした世界との関係がよくわからないまま、単純にいえばズタボロになったので恐い世界とはなっているし、そこからずいぶん長い時間を掛けて生きる道を捜したようにも思うが。
 まあ、なにかが決定的に難しい。