中年男の痴漢がまるでわからん

 同じく中年男ながら、まったく理解できない。
 DVというのも、まったく理解でない。いや、まったくとまでは言えないか。でも、人に暴力的であることに、私は恥辱感を覚える。
 ロリやペドも理解できない。
 同性愛については、かなり嫌悪があるので、なにか無意識の由来はあるのだろうし、この嫌悪は文化的に組織化されているので、私のパーソナルな無意識史には関係ないだろう。
 で、中年男の痴漢だが。
 先日、植草氏の裁判みたいなニュースを見かけた。ひどいものだった。彼に対するセカンドレイプとも言えるのではないかとも思ったが、まあ、世の中、痴漢疑惑のある中年男に人権も尊厳もないということになっているのだろう。というか、そういうふうな類型にされて唾棄されるようなものだな、中年男はとも思う。
 で、そのニュースとかには、彼の性癖というかセクシャル・ファンタジーみたいなものの断片はあり、それはそれで面白いのだが、同じく中年男ながら、まったく共感できなかった。私は、ちょっと人格パラメーターみたいのを無意識的に操作することで、かなり異常な人でも理解できる的な能力がちょっこっとあり(それが危険だが)、ちらとそのコンフィグを見渡したが、だめだった。
 ある意味で、痴漢というのは、他者への侵犯であろうし、その確信への高揚のようなものではないのか。全然違っているかもだが。
 私は他者に侵犯しようとはまるで思わないというか、私にとって他者とはそれが異性であっても、20センチくらいしか離れてなくても、地球とM78星雲くらい離れて感じられる。 結果的には、私という人間は、性犯罪を犯す可能性はかなりなく、またその手のごちゃごちゃを起こす可能性もない。ただ、私のある種の凶暴性みたいなものはその分野ではないのだろう。
 というか、私の無意識のなかに、武士の気概みたいなものはあるな。家系的なものかもしれないが、無意識の補償みたいなものか、あるいは別種の無意識の防衛なのか。
 そういえば。
 むかーし、あるからおけ飲み屋に連れて行かれて、隣に若い女が座って(そういうところだ)、あんた悲しそうねと言った。るっせぃばーかと反射的に思ったが、なにか、その女の言葉に奇妙な真実性というか湿ったような感触があり、それが触れてはいけない嫌悪のように思えた。そういえば、同じような経験で、今度は向かいに女が座って(そういうところだ)適当に話して、そして時間だというので切り上げたとき、女が私の両手をぎゅっと掴んだ。一瞬呆然として、振り払うということもなかったが、泣きたいような気持ちがあった。いやだ、そういう中に埋没したくはないんだという思いがあった。
 私は何を嫌悪していたのだろう。何に戦っていたのだろう。ただ、今の私がその結論だとすれば、まあありがちに無ということになる。なんにもない。諸行無常