ほぉ、その評はお見事

 構造主義の入門ということなら、まずピアジェのこれくらいは……とか思ったら、アマゾンの素人評がお見事。
 ⇒「 構造主義: 本: ジャン・ピアジェ,滝沢 武久,佐々木 明」

本物の構造主義者による、科学的な構造主義入門, 2005/6/13
レビュアー: 蒼龍 - レビューをすべて見る
認知心理学の源ともなったスイスの心理学者ピアジェによる構造主義の分かりやすい解説書。
日本で巷にある構造主義の解説書のほとんどはソシュール経由のフランス構造主義ばかり。構造主義の解説書というと、橋爪大三郎の「はじめての構造主義」という名著がある。あれはレヴィ・ストロースからの入門だが、数学的構造主義にも言及している親切な本。しかし、数学的構造主義を本格的に用いた理論といえば、ピアジェの発生的認識論がある。その構造主義者の一人であるピアジェが書いたのがこの本なのです。
 
どうも日本では構造主義というと、フランス現代思想ばかりが紹介されがちだが、心理学を専攻していた身からすると、ピアジェチョムスキーがなぜ無視されるのか、不満でたまらなかった。そういうわけで、この著作はその空白を埋めてくれる見事な入門書になっているのです。とくに、最後のフーコー批判はものすごいものがある。「言葉と物」は理由もなく変化する恣意的な構造に過ぎないという批判はさすが。構造主義とは、実は科学的方法論だったのだと気づかせてくれる稀有の傑作。
 
ただし誤解してはならないのは、フランス構造主義が全くダメという事ではないということ。実際、ピアジェアルチュセールの事は褒めている。本当に必要なのは、その方法や理論が現実を理解するうえでいかに役立つかを、きっちりと捉えなくてはならないことなのです。安易に特定の理論を受け入れたり捨て去ったりすることがどんなに不毛なことか。そういう本来の意味での科学的な態度を教えてくれるのもこの本なのです。

 まさしく、「構造主義とは、実は科学的方法論だったのだ」ですよ。
 ただ、思想の文脈ではそうでなくなった。
 なぜそういう変化があったかというと、冷戦下の欧州の問題だった、と。