またポエム

 
あの時激しい雨の音を聞きながら消えていった私
若葉色濃くなるころの苔生す山道に消えていった私
静かな海の緑の濃くなる波間に消えていった私
何かの死骸に群がる熱帯の蟻たちを見つめながら消えていった私
強く暗く匂う長い髪に息を詰めながら消えていった私
 
あのときの私は消えて
今いる私は
なんなのだろう
 
今いる私は
擬似的な電子作用の
文字の中の幻影
 
私とは私の不在
不在の祝福
 
小さな小さな馬たちが
細胞のように寄り添う祝祭
 
少女のように
少年のように
踊り疲れて
廃墟のビルのようなこの私も
幸せに眠ることができるればいいのに