ヘッセは「知と愛」をまず読んでそれから関心があれば他も読めばいいのですよ

 ⇒「 知と愛: 本: ヘッセ,高橋 健二」
 素人評。

知性と感性の出会い, 2005/6/28
レビュアー: umschau (東京都文京区) - レビューをすべて見る
 ヘッセの作品というと『車輪の下』や『春の嵐』といった初期の青春小説ばかりが取り上げられるが、その実、ヘッセの真価が発揮されるのは『シッダールタ』以降であり、彼の文体・思想性の高みはこの『知と愛』をもって完全に結実する.
 物語は修道院をとび出した愛の人ゴルトムントの放埓な人生を中心に幻想的なタッチで描き出され、彼の旅は修道院に残り謹厳な日々を生きた知の人ナルチスとの邂逅によって終りを告げる.
 彼らの対照的な生涯はただ二人の人間のコントラストというだけでなく、知性と感性との鬩ぎ合いといった様相を呈し、ぶつかり合う二つの真理として光芒を煌めかせる.
 果たしてヘッセは知の人であり、全篇を彩るゴルトムントの華やかな道程は実のところ作品の本旨ではない.そこに、この小説の妙味があるといえる.
 およそ長きにわたって閑却されていたナルチスという人の思いは、語りの位置にあって読者とともにゴルトムントを見つめ続ける.ナルチスの迷いも、苦悩も、絶えずゴルトムントの人生に寄り添っているのである.
 しかし、この小説はひとつの芸術としては曇りなく完成されていながらも、知性と感性の攻防という最大の問題を読者の心中に残したまま幕を下ろしてしまう.
 ナルチスのなかで火を点した愛への求めは、後にヘッセ最後の長篇『ガラス玉演戯』へと導かれていく.

 最後の一文は私はちょっと違う感想を持っているけど、「 ガラス玉演戯: 本: ヘルマン ヘッセ,Hermann Hesse,高橋 健二」が素晴らしい点については異論はない。読みにくいだろうと思うけど。
 「知と愛」が読めたら、次は。

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荒野のおおかみ: ヘッセ,Hermann Hesse,高橋 健二
 あと。
 Amazon.co.jp: シッダールタ: 本: ヘッセ,高橋 健二
 は、手短で面白いけど、こ煩く読む人が多いのではないか。
 新訳があった。
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シッダールタ: ヘルマン ヘッセ,Hermann Hesse,岡田 朝雄
 「シッダールタ」の真価は、女の身体が残した実の子というものの感触にある。ほんとうはそこをもっときっちり描けば文学になったのだろう。
 「ガラス玉演技」は優れているけど、ヘッセという人は、文学からは逃げた人かもしれない。
 でも、「知と愛」でもそうだけど、ヘッセという男は、女の肉体を非常に欲した。その意味合いをかなり深く問いつめたのだと思う。ちょこっというと、消えてしまった?noon75さんよりも。