私はいい女をカネで買う……ということはしたことはない……

 カネがなかった。
 「女」というのは、高いものだ。
 それと、これを言うと批判されるかもしれないが、私はけっこう上流のお嬢さんとか見ていた。まぁ、よほどでないとそういうお嬢さんと恋愛とかはできないものだが……で、なんというか、女というのはカネで買えないというのがわかった。
 カネでいい女を買おうとするのは、ある種のルサンチマンなのだろうとも思う。
 それと、子供ながらに働く女はいい女だとも思った。商売のできる女というのはいい女だ、たいてい。
 で、も、世の仲には高いカネで買う「女」というものはあり、私には、カネに縁がないのでそれにも縁がなかった。
 ビート・タケシだったか、カネができて、いい「女」を買いまくった話をしたのを読んだことがある。カネがあると買えるということだった。名声もであろう。いずれにせよ、やりまくって、むなしかったと言っていた。
 「男」というのはしょーもないもので、女にむなしくなりました、終わりとはいかない。それは、もう、男である業のようなものだろう。
 まあ、それはそれ。
 ワインに一時期凝った。それなりに金回りのいい時期だったし、世の中まだワインブームでもなかった。いわゆる高級ワインの名前と味をアソシエイトするほどでもなかったが、なるほど、上には上のワインがあるのはわかったが……ある日、酒が飲めなくなった(病気)。してみると、どんなワインも私には関係がない。ワインより、残った命がなんぼのものでもある。
 お茶に一時期凝った。酒の飲めないやつが、茶に代えるというような中国のことわざがあったか。まあ、そんなものだ。中国茶商にだまされてもみて、いろいろ茶も覚えた。だまされたなんてよくないな、そういう口上やトリックに大枚をはたくのも茶の楽しみというものだろう。で、ある程度、飲むと、もちろん、さらに上には上があるのはわかったが、頂上が見えるように思えたら、茶にも関心を失った。
 他になんだろ。
 まぁ、小銭で楽しめるものに凝って飽きるわけだが、そうした遠い延長に「いい女」もいるのだろうが、まあ、違うのかもしれない。
 女に縁のない人生かというと、それはそれとは違う話でもある。