そういえば、日垣隆がイラクに行ったときの…

 その3。私は「取材=インタヴュー」というスタイルに根源的な疑念を抱くようになってしまった。仮にインタヴュアーが英語やアラビア語を完璧に駆使でき、または息の合った有能な通訳者を同行できたとして、数十人の米兵およびイラク人に何かを問い、詳しく返答を得られたとしても、それが何を示しているというのだろう。
 要するに私は、取材とは、文献を読み、歴史を知り、現地を体感し、内外の人々に問い、気づき、諸々の疑問を解き明かしていく一連の営為である、と考えるようになってしまったのである。


 別言すれば、取材は、相手の問題ではなく(インタヴューしてその返答を書き連ねる方法論は明らかに取材を「相手の問題」として捉えていることにな る)、「おのれの問題」ではないかと私は強烈に意識するようになっていたわけです。
 したがって、とりわけ不得手の分野や地域に関しては少なくとも、同行する多様な人々の耳目や、体験および職業の多彩さが、とても好ましいものとして作用することが大いに期待できそうな予感がしたのでした。