曇り

 蒸し暑い。無意識のなかでいろいろうごめいているものがある。なんど見直してもその奥底には死と、そしていつも不定形な孤独のようなものがある。人間とはそんなものだということにも慣れつつあるが、そうではないな、それは私の欺瞞の姿に違いないなとも思う。明暗を再読して、またその続で伏線を解読しつつ、由雄や延子が琴線に触れてくるあたりに、そして漱石がこれに結果的とも言えるが死をかけたあたりに、人生のどうしようもないやりきれなさがある。どこかで人生を間違えたのだと言えないこともないが、漱石先生の生というもの、文学というものを見つめると、そういう簡単な話でもない。それを救いというなら文学だけがもたらす救いでもあるのだろうし、信仰に縁のない自分にはそこになんども行き着く。