日経新聞社説 尖閣ビデオは本当に秘密に値するか

 今回の事件に限っていえば、ビデオ映像が刑事罰をもって守るのに値する秘密なのか大いに疑問だ。
 国公法100条にいう秘密とは、最高裁判例により「非公知の事項であって、実質的にも秘密として保護するに値し」なければならない。
 政府は漁船衝突事件の証拠になる捜査資料だから刑事訴訟法の規定で公判前には公にできない、との見解をとってきた。しかし漁船の船長を中国に帰国させた結果、船長は裁判にかけられないし、ビデオ公開によって船長らの名誉を傷つける恐れもないのだから、同規定はもはや非公開の根拠になりえない。
 また、ビデオのダイジェスト版は映像流出の前に国会議員に視聴させている。さらに、映像自体は公にされていなかったとしても、映像が伝えるのは、中国漁船から巡視船にぶつかってきた衝突の状況であり、政府が早くから公言してきたところだ。海保が撮影から1カ月たってビデオ映像の管理責任者を置いたのも、秘密性の薄さをうかがわせる。

 公判の維持は難しいでしょうね。