日経 春秋

 玉音放送が流れた8月15日というと、カンカン照りの空と蝉(せみ)の声のイメージが染みついている。よく引用されるのは高見順の「敗戦日記」だろう。「夏の太陽がカッカと燃えている。蝉がしきりと鳴いている。音はそれだけだ。静かだ」
 小説も映画も、こういう情景を繰り返し描いてきた。その日はたしかに世の中をそんな静寂が支配していたに違いない。が、だからといって誰もが茫然自失(ぼうぜんじしつ)となってただ頭(こうべ)を垂れていた、と思い込むのは早合点だ。当日のNHKラジオひとつをとっても、終戦関連のニュースが堰(せき)を切ったようにあふれ出している。

 ⇒終戦記念日という神話: 極東ブログ