日経 春秋

もっとも、今回の文書流出にはペンタゴン・ペーパーズと決定的に違う点が一つある。元国防総省の職員は家族や友人まで動員して文書を一枚一枚コピーし、ニューヨーク・タイムズに手渡したと語り伝えられる。それが今回は、電子情報として持ち出された。いわばクリック一つで大規模な機密の漏洩(ろうえい)が起きた。

 クリック一つであったかはわからないが電子文書がコピーされたのはおそらくそれに近いだろうが、その暴露は慎重にメディアを介して行われた。その意味では、ペンタゴン・ペーパーズと同じだった。

米軍がアフガン戦争の拠点とするパキスタンの軍情報機関が、アフガンの反政府武装勢力タリバンと癒着している。こんな疑惑がウィキリークスの暴露で表に出た。パキスタン重視のオバマ政権は対応に追われている。電子のネットワークが広く浸透したいま。もはや「知らしむべからず」では済まない時代だろう。

 暴露情報の価値は低かった。というか低レベル情報だった。そして、その真偽は曖昧だった。ジャーナリズムの仕事はその検証。