朝日社説 米飯給食―「食の教育」のためにも : asahi.com(朝日新聞社)

 「身土不二(しんどふじ)」という言葉がある。人間の体と土とは一体だという意味だ。明治時代に軍医の石塚左玄らが起こした「食養道運動」のスローガンに使われ、「自分の住む土地の四里(16キロ)四方以内でとれた旬のものを食べる」ことを理想とした。

 そこからマクロバイティクスになり、トンデモになる。
 でも、この朝日新聞の社説などは、しかし、偽科学批判の対象にならないんだろう。偽科学批判は市民運動だし、市民運動は基本的に左派なので朝日批判はしづらいのだろう。
 仏教の伝統からすると、「不二」は「ふに」と読むのだが、食養系の人は「ふじ」と言うことが多いように思う。間違いでもないのかもしれないが、ちょっとトンデモ臭がすることろ。
 「身土不二」よって、克山病はやむなし、かな。
 ⇒JST中国文献ディレクトリ|克山病(Keshan Disease)と心筋糸粒体病(Mitochondrial of Human Myocardium)
 

追記
 ⇒J. Nakanisi Home Page

雑感282-2004.11.24「漢方薬の問題 −高橋 晄正さんの訃報に接して−」
11月10日、各紙は高橋 晄正さんの訃報を掲載した。亡くなったのは11月3日、心不全のためとある。86歳だったとのことで、若い方の多くは、名前も知らないかもしれないが、薬害のことで活躍し、医学に科学を持ち込んだ功績で有名。

薬害
東大では物療内科に属する医師だった。病院で患者さんを診る仕事もしていた。私が最初に高橋さんの文章を見たのは、グロンサンに薬効がないという内容だった。当時、統計学の重要性も知らなかったのだが、高橋さんの論理のするどさに感銘を受けた。
 
薬効判定に二重目隠し法などが取り入れられていなかった時代のことである。我が国で、このような科学的な検証方法が取り入れられるようになったのは、国際的な圧力(日本の方法では、外国の試験ではパスしない)と、高橋さんの功績である。高橋さんの主張は、西欧の流れを汲んでいるが、西欧医学の中でも新鮮な主張があった。
 
グロンサン問題以前から、サリドマイドやスモンなどの薬害問題に取り組み、1970年には、「薬を監視する国民の会」を作り、また、「くすりのひろば」というレベルの高い小冊子を出していた。それは西洋医学、現代医学の批判という側面を強くもつ内容だった。そして、私が高橋さんの名前を知る頃には、市民運動の中では、まさに神様のような存在になっていた。
 
漢方薬
ところが、1980年代後半になって、高橋さんは市民運動から厳しく批判され、攻撃される存在になってしまっていたらしい。ある時、友人からそのことを聞かされて驚いた。「どうして?」「高橋さんが、漢方薬の批判をはじめたから。確かに、高橋さんの言うとおりだと思うけど、あそこまで強く批判しなくともいいと思うのだが。今までの高橋シンパは、ほとんど批判派になっている、なぜ、かくも孤立化の道を選ぶのか?」と友人は言った。

研究者を切り捨てる市民運動
市民運動のまさに神様であった高橋さんは、漢方薬の危険性を指摘するようになってから、市民運動から「敵」のように攻撃されるようになった。市販の(西洋医学の)薬の薬効試験に問題があると指摘したことで、市民運動では尊敬された。
 
しかし、西洋医学の薬の問題点を摘出し、検証するために使われた同じ科学を用いると漢方にも問題があることが分かった。いや、もっと大きな問題があった。だから、訴えた、漢方薬は危険と。
 
それを市民運動は認めない。西洋医学はダメだが、漢方は良いと思っているから。

 この指摘の背景はこの問題の時代を生きたものとしては感慨深いものがある。
 米国では以下の本が代表的なように、伝統中国医学(TCM)つまり漢方もホメオパシーと同じ偽科学として扱われているが、日本ではホメオパシーバッシングは盛んでも漢方は例外となることが多い。(実際には日本社会ではホメオパシーと漢方を比較すると前者の影響はかなり小さいにもかかわらず。)

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すすんでダマされる人たち ネットに潜むカウンターナレッジの危険な罠: ダミアン・トンプソン, 矢沢 聖子
 伝統的な薬草には科学的に見て有効成分があるというのは事実だが、それは本草学なり薬草の学問であって伝統中国医学(TCM)つまり漢方という医療知識の体系ではない。
 また漢方薬に焦点を当てた場合も、日本では処方薬・市販薬として国家が認定しているのだから、他の薬剤と同等の基準で科学的に評価されなくてならないはずのものだ。
 この問題に真摯に取り組んだ高橋晄正さんは、実際には、市民団体から敵視されるようになった。
 背景には、例えば市民団体と次のような左派指導者との関係があると見られる。朝日新聞出身の本多勝一氏の漢方賛美や
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はるかなる東洋医学へ (朝日文庫)本多 勝一: 本
 総評事務局長高野実の次男で高野孟の弟津村喬氏の
 ⇒「 毎日できる・東洋健康法―「医療」から「養生」へ (東洋体育 新しいからだそだてシリーズ): 津村 喬: 本」
 などである。
 ただ、左派的な週刊金曜日による「買ってはいけない (『週刊金曜日』ブックレット)」には、偽科学としての批判も集まるようになったので、こうした傾向も薄らいできているのかもしれない。