曇り

 天気図を見ると秋らしい配置になってきた。散歩すると夏の草は枯れ、秋に移行しつつある。以前は深まりゆく秋という趣が好きだったが、このところ晩夏から秋を感じる気配も好きだ。若い日には夏の恋というか思い出みたいなものがありがち、というか、実際渦中にいた経験だと青春時代というか何かしら自分の若さにある物語を求めがちになる。そして大学時代が終わり、社会と向き合い、恋なども変わっていくのだろうが、おそらく大半の人間はそういう恋などとは無縁で、僅かなエピソードで物語を紡いでいくしかない。私は自身の人生が些細でつまらないものだし、なんだかセコハンのゴミのように思っていた。しかし、人というのは大半はそういうふうに生きるものだ。そこに意味を認めるというより、小ささや惨めさみたいなものを通して、むしろ物語を薄めたり再構築したりするのだろう。夢は見たと思うが覚えていない。