朝日社説 失業率5%―雇用創出に官民の知恵を : asahi.com(朝日新聞社)

 予想されていたことで、その意味ではどうという話題でもないのだが、社説としては書かざるをえないところだろう。

 雇用情勢が急速に悪化している。4月の労働力調査では、完全失業率(季節調整値)が5.0%で、5年5カ月ぶりに5%台になった。このままだと過去最悪の5.5%を超え、6%台にまで悪化するとの見方も専門家の間にある。失業の増加に歯止めをかけるためには、政府が全力で雇用創出や就職支援に取り組む必要がある。

 というわけで、失業を食い止めるには、政府が雇用を生み出せということで、どんだけ社会主義という感じもするが、これが冗談ではなく社説に載る。もちろん、政府は対策しなければならない。でも、それが雇用創出・就職支援というのは、率直に言えば、短期と中期のビジョンを失っている。しかし、好意的に短期の問題として見るというのがわからないわけでもないが。

 失業率の悪化にブレーキをかけようと、雇用対策などを柱とする総額15兆円余りの経済危機対策を盛り込んだ09年度補正予算がきのう成立した。一連の対策によって3年間で計390万人の雇用が守られるという。

 15兆円に朝日批判的ではなかったか。しかも、この金額はただの需給ギャップ調整でしかない。つまり、需給ギャップが失業の根幹にあるのだが、そこはすでに論じられない。この需給ギャップは政府が認めざるを得ないという最低線であって実際にはさらに深刻になる。

 また、「緊急人材育成・再就職支援事業」では、失職していても雇用保険の対象にならない人たちが職業訓練を受けながら生活できるよう、生活費を保障することにした。さらに、「雇用創出対策」として自治体が森林整備や介護補助などの雇用機会を中高年に提供するための財源を盛り込んだ。

 前半はしかたない。後半はそこまで「中高年」かというのはあるかもしれない。

 予算の執行には時間がかかりがちだが、対策が速やかに実施されるよう、政府と企業、自治体がこれまで以上に力を合わせる必要がある。

 公務員をワークシェアするとよいと思う。これは冗談のように聞こえるかもしれないが。

 同時に、人手不足が続いている医療や介護などの福祉分野については、就職相談の機会を増やすなど、取り組みを強めることによって、雇用をさらに生み出すことができるはずだ。

 問題はそれで雇用が充足されるかということだ。

 これまで製造業にいた人たちが急にこれらの分野の仕事に就くのは、易しいことではない。研修や職業訓練の機会を幅広く設けたり、働きながら介護職の資格がとれるようにしたりすべきである。待遇の改善も重要な課題だ。

 ここで朝日は、なぜその人々が製造業にいたのかを見ていない。需給のフレームワークがまったく頭にないからだろう。
 国家は税金で成り立つ。税金は、天から振ってくるものではなく、民間の産業が興隆して出てくる。そんなあたりまえのことの壮大な崩壊を見るために20世紀の後半はあったというのに。