朝日社説 北朝鮮の核実験―米中の連携で暴走止めよ : asahi.com(朝日新聞社

 全体として悪い社説と言い難いのだが、泡でも吹いているような支離滅裂感はある。

 この時期に再び核実験に踏み切った北朝鮮の狙いは何なのだろうか。
 一つは、本格的な核武装国家としての存在感を高めるために核技術を向上させ、誇示したいということだろう。朝鮮戦争を最終的に終わらせ、米国との関係正常化を目指すためにも、「核」をめぐる交渉に米国を引き出すことが北朝鮮の年来の狙いだ。

 率直に言って、文章が未整理なせいなのだろうが「朝鮮戦争を最終的に終わらせ、米国との関係正常化を目指す」のが北朝鮮のように見える。が、それは特殊な修辞という以外はない。

 ここにきて矢継ぎ早に危機カードを繰り出す動きには、北朝鮮の政権内の事情が絡んでいるとも見られる。
 金正日総書記は健康不安を抱え、「金王朝」の将来は楽観できない。権力継承に備えて強硬路線で国内の体制を引き締め、同時に米国との取引を急ぐ。そんな思惑があるとの分析だ。

 そこはたしかにそうなのだが、この考察はこの段落で途切れていている。つまり内情をどう朝日が見ているのかわからない。

 中国には中国の外交判断もある。北朝鮮に対して強い姿勢に出れば、北朝鮮がより孤立し、中国の国益にも世界の安全にもむしろ良くないということだ。とはいえ、安保理では北朝鮮に向けて強いメッセージを出す方向で、制裁の徹底実施や追加措置などの協議に主導的な役割を担ってもらいたい。

 その中国国益とは何か? ここがけっこう本質なのだがまたしても考察はここで途切れる。

 中国の役割もはっきりしている。米国とともに東アジアの長い目で見た安全保障がどうあるべきかを考えてもらいたい。世界同時不況の中で米中の戦略的な連携が重みを増している。朝鮮半島の安定はそれを生かすべき最たる領域ではないか。

 これが簡単な問題ではない。ちょっとダーティな言い方をすると米中は日本を北朝鮮でピン留めしておきたい。韓国はまたナショナリズムを抱えている。

 日本は、被爆国として「核のない世界」への取り組みに参画しようとしている。同時に、北朝鮮の核実験や拉致問題を深刻な脅威として受け止めざるをえない立場だ。現実には日朝の直接協議で事態を動かせる可能性は、いまは残念ながら乏しい。
 米中の連携を促し、韓国とともに地域の安全確保へ積極的に後押ししていきたい。

 この段落の標題が「日本も積極的に動け」なのだが、ようするに米中連携、つまり、牛後となれなので、積極性にほど遠い。
 朝日をあげつらうものではないが、ある意味で、この問題の混乱のマップになっているなと思った。