朝日社説 水俣病救済―二重基準の放置いつまで : asahi.com(朝日新聞社):社説

 法理的にはこれもありだろう。

 打開への道ははっきりしている。
 04年に最高裁環境省の認定基準を否定し、被害者を幅広く救済する基準を打ち出した。この判決を機に、基準が変わることを期待して認定申請者が急増した。環境省は、最高裁に否定された時点で、77年につくった認定基準をただちに改めるべきだったのだ。
 だが、「変えれば、新たな不公平を生む」としていまだに変えようとしない。このため、行政と司法の二つの基準に戸惑って、各県の認定審査会は停止した。
 この混乱を収めるため、水俣病問題の与党プロジェクトチームが新救済策をまとめた。手足の先になるほど感覚が鈍る障害がある人を「水俣病被害者」と位置づけ、1人あたり150万円の一時金と月額1万円の療養手当を支給するという内容だ。しかし、補償をすべき原因企業のチッソは「すでに解決済みだ」として受諾していない。

 錯綜した歴史はある。その背景で「科学」が静かに問われている部分もある。