日経春秋 春秋(11/30)

卒業時の景気次第で人生が大きく変わる。就職氷河期の卒業生には、今なお厳しい環境で働く人も多い。

 私の父の世代は戦争で、人生がめちゃくちゃになった。父もその一人だった。ただ、生きているだけでもうけものでもあった。
 人生というのは、過ぎ去ればそう長いものでもないし、過ぎされば、富や権力も無になる。どう生き延びているかについては、40歳半ばあたりに見えてくるものがあり、五十にして天命を知る、というのは、至言だろう。あるいは、天命を知り得ないことを知るというべきか。あるいは、その挫折こそが天命だったと引き受けることか。