曇り

 そういえば、曇りガラスという言葉を聞かなくなった。今でも、その名前で呼ばれるものがあるだろうが、たぶん、私がその言葉で思い出すそれではない。セロハンテープを貼って覗き見るあの世界を仕切るあれではない。追記 曇りガラスではなく、「磨りガラス」だった。
 子どもの頃、ボール遊びをすればたまにどこかの家のガラスを割ったものだった。そしてあやまりに行った。そのまま、笑って許す大人もあり、大人同士の弁償ということもあった。子どもを叱ることもあったが、居を構える人たちは叱る意味を知っていた。まあ、その世界がよい世界だったということがいいたいわけではない。そういう世界があった。
 夢は忘れた。寝付かれずにいて、もしかして、また体が冷えているのかなと思ったが、そんな感じはしない。しかし、ぬくめると眠った。そうして老いて、最後は醒めない夢に消えていくというのもよいんじゃないかという心地よさはあった。人生に目的というのはたぶんない。が、それでも、人生を遂げたことの祝福というものはあるようにも思う。そして、本当はその祝福は私のものではないという贈与を受けるとき、その分、私は私のためではない人生の価値を考えていかなくてはならない。