日経春秋 春秋(11/25)

 あのニュースをどこで聞いたか、50歳以上なら、多くの人が記憶しているはずである。38年前のきょう、作家の三島由紀夫は東京・市ケ谷陸上自衛隊・東部方面総監部に入り、総監を監禁し、バルコニーで演説、割腹自殺した。
▼亡くなったとはいえ、三島の行動は、明らかに刑法に触れる。つまり犯罪である。でも三島作品は書店の店頭から消えなかったと記憶する。逆に多くの三島本が並んだ。作家と作品が別人格とすれば、当然だろう。ノーベル賞候補だった作家の行動に、どんな文学的背景があったのか、世の読書人は知りたがった。

 文学じゃないよ。政治思想としては、その立場は許容できるものではないけど、理路に間違いがあったわけではなかった。檄を感情を抜きにきちんと政治思想として読めば、そこにはきちんとした理路があり、日本が存続する限り拮抗するものがあるよ。そういうふうに読める日本人がいればのことだけど。