日経社説 金融危機が影を落とす米大統領選挙

 マケイン氏は企業減税など共和党の伝統的な経済政策による景気回復策を語り、オバマ氏は中間層に対する配慮の必要性を指摘した。経済をめぐる議論は総じてオバマ氏が攻勢に立ち、マケイン氏は守勢をとる形になった。

 守勢というより、オバマ風の正論はバラマキから成り立つのだけど、マケインのほうはもっと国家の怖さを知っているように私には思えた。

 外交・安全保障政策ではイラクアフガニスタン、イラン、ロシアなどが話題になり、双方が持論を述べた。マケイン氏は再三にわたり「オバマ氏がご存じないようだが……」と切り出し、攻守の立場が入れ替わる展開となった。特にイランのアハマディネジャド大統領とも対話するとの過去の発言をとらえてオバマ氏を苦しい立場に追い込んだ。

 このあたりはマケインの経験は確かだと思った。マケインは自分を殺しかけたベトナム政府ともなごやかに対話できるし積極的にその対話を開いた人で、まあ、ただものではない。

 皮肉にも、金融システム安定化のためにブッシュ政権が決断した公的資金投入には、伝統的に市場への政府介入を嫌う共和党にためらいがあり、民主党は必要と考える。

 ポールソンがその共和党のイデオローグ的にも見られていた。バーナンキ僧正といいポールソン禅師といい、まあ、現状これ以上の人材は望むべくないんではないか。