モラル・ハザード関連
最近の金融危機をめぐる報道で、「モラル・ハザード」という言葉がよく出てくる。新聞ではたいてい(倫理の欠如)と補足しているが、これは誤訳である。この言葉は保険用語で家の燃えやすさなどの"physical hazard"(物質的危険)と対になる概念で、Slateの記事にも書かれているように、moralは「倫理的」という意味ではなく"perceptual or psychological"という意味だ。つまり"moral hazard"は、保険に入ったことで防火を怠るなどの「心理的危険」のことである。
池信先生への異論ではないのだけど。
"perceptual or psychological"の"psychological"の語感は日本語の「心理」というより、「規範意識」に近いはず。
商慣例にはルールがあり、次にethicsがあるのだけど、このethicsに近い部分。
だけど、池信先生先生の。
これを防ぐには、リスクの高いエージェントの保険料を引き上げるなどの対策が有効で、倫理とは関係ない。
とあり、じゃ「倫理」じゃないのとなりがちで、そこが微妙なんだけど、日本語の「倫理」というのとethicsは若干違い、ethicsは、"Code of Ethics"という言葉があるように、日本人が内面的な道徳・倫理と捉えているものではなく、信頼に対する明示された規範行動への信頼のような含みがある。(基本的に、psycheというのは心的というより脳機能作用といった語感。)
今回の状況だと。
⇒極東ブログ: つまり、第二のプラザ合意みたいなものかな
でふれたサミュエルソンのコラムにこうあるんだけど。
Objections to Paulson's proposal abound. It would rescue some financial institutions from bad decisions and erode the normal discipline of potential losses. Some investors doubtlessly bought subprime securities at huge discounts and would reap massive profits by reselling to the government.
この"normal discipline"のerosionが"moral hazard"になると、思う。
ついでいうと、この感覚は、creedの意識に関連しているのだけど、そこまでいうと日本人にはほぼ通じないのではないかな。