缶コーヒーの思い出

 稀に缶コーヒーを飲む。私を知っている人がその光景をごく稀に見かけると驚くらしい。なぜ?と。俺、コーヒー通じゃないしさとか言う。苦笑される。
 なぜ缶コーヒーを飲むのかというと、さして考えてない。気分。ただ、一つの光景はうかぶ。沖縄暮らしで、朝ちょっぱやに目覚めたら、海辺を歩いてセリを見に行くことがあった。セリの光景は面白い。飽きない。そしてぼうっと海や港や人をみているうちに、漁師だの仲買のおっさんにつられていいうかまじって缶コーヒーを飲む。別にうまくない。変な味がする。でもなんかぴったりくる。
 もう一つこれはリアルな光景ではないけど、ちょっとタバコのすえた感じのガススタンドでこれもおっさんに紛れて缶コーヒーを飲んでいる自分。
 と書きながら、自分はいつまでたっても大人になれない。50歳だぜ俺。でも、どっかで、きゅーっと子供心性で世界を見て、その大人への憧れにすぽんと嵌ってしまう。