毎日社説 社説:医師の増員 舛添さん、今度こそ成果を - 毎日jp(毎日新聞)

 厚生労働省が「安心と希望の医療確保ビジョン」をまとめ、医師不足の解消に大きくかじを切った。82年に閣議決定した「医師数の抑制」方針を転換するものだ。医師増員を阻んでいた壁を崩すことを意味し、国がようやく医師不足対策に取り組む姿勢を示したものと受け止めたい。同時に、政府の対応遅れが医療崩壊を招いたことも指摘しておきたい。

 
 ちなみに。
 
国立医・歯学部100人削減へ 千葉大など5校 62年春から過剰時代に対応(読売1986.12.16)

 医師の過剰状態を解消するため、大蔵、文部両省は十六日、編成作業中の六十二年度予算で、三つの国立大学医学部と二つの同歯学部の入学定員を合計百人削減する方針を固めた。厳しい財政難から、来年度の文教予算は圧縮が避けられないが、両省は定員削減で浮いた分を医科・歯科生の臨床実習の充実などに振り向ける考え。医師養成の「量から質への転換」を促進する狙いだ。
 百人削減の内訳は、千葉大鳥取大、鹿児島大の各医学部の定員を百二十人から百人に減らし、九州大、広島大の歯学部の定員をそれぞれ八十人から六十人に削減するというもの。六十二年度予算の今年度内成立を前提に、六十二年春の新入学者から適用する。
 両省が医科・歯科系の学生減らしを図るのは、医師の過剰問題が深刻化しているため。臨時行政改革推進審議会も六月の最終答申で、国立大学医・歯学部の入学定員について速やかに見直すよう求めている。
 厚生省は四十五年、人口十万人当たりで、六十年までに医師百五十人、歯科医師五十人の目標を設定した。ところが、この目標は医師が五十八年、歯科医師が五十五年に早くも達成され、その後も“医師乱造時代”を反映して増え続け、地域によっては、医師が集中したため過当競争気味になっている。
 一方、厳しい財政難のため文教予算はピンチに立たされている。概算要求の〇・一%増の確保は難しく、国立学校特別会計の赤字も膨らんで新規施策にも大きな足かせになっている。このため、大蔵、文部両省は、入学定員百人削減による予算の節減効果を生かして、臨床実習の充実など医・歯科学部の教育条件の向上を図る方針。
 なお、国立大学医・歯学部の現状は、医学部が四十二大学、定員計四千五百人、歯学部が十一大学、八百二十人。

 ちなみに。
 1987年9月10日読売新聞社説「われわれが望む“良い医師像」

 患者側からみると医師は足りないように見える。厚生省からみると医師は過剰−−この矛盾はどこからくるのだろうか。
 東京のような大都会でも、医師が偏在しているからだ。若い医師は大学病院に集中しがちだ。このため都会の病院でも医師が足りない。その不足分を非常勤医師でまかなっている。その実態は不明だが、非常勤医師の大部分は大学病院にいる。
 日本医学会総会で今春発表された論文によると、大学を卒業した若い医師の六二%は、そのまま大学病院での勤務を続けることを望んでいる。彼らの希望は専門医になることで、家庭医になることを敬遠しがちだ。
 ところが患者は、大学病院や大病院に家庭医の役を期待している。
 「こんな軽い病気でなぜ大病院にやってくるんだ。家庭医のところに行けばいいのに」と医師は考える。だが、開業の家庭医は若い医師のなり手が少ないので老齢化し、新しい医学を知らない人もいる。患者は「やはり大病院でなければダメだ」と思うことがある。