日経春秋 春秋(4/9)

ことしはその蕊ごと、桜の花が萼も柄も一緒にぼとりと落ちている、という話を何回か聞いた。花弁が散り、次に蕊が降り、続いて若葉が光り、果実が熟する。命の型は季に応じて鮮やかに移ろう。連綿と続いてきた自然の型に異変が起きているように、人間社会の型もまた崩れつつある。

 ちょっと野暮な話になるけど、染井吉野というのは人間が作り出した一種の畸形であって、実生にならない。クローンなのだ。日本中に咲き乱れる染井吉野の木のようにみえるものは、実は一本の木の枝といってもいい。
 非自然というか超自然な産物であり、あれは昭和という時代の不自然生を象徴している。
 ⇒極東ブログ: 敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花