「みんなの知識」をビジネスにする(兼元謙任・佐々木俊尚)、読んだよ

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「みんなの知識」をビジネスにする: 兼元 謙任,佐々木 俊尚
 よくわからなかった。
 ネット漬けになっている自分からすると、わからない概念もサービスもないのだけど、何がいいたい本なのか、そこがもどかしかった。
 内容は対談本。兼元謙任と佐々木俊尚の二人の対談でなく(それも一つあるけど)、彼ら二人が、集合知関連サービスの要人と対談したのを、べたに文字起こししたという感じ。
 対談相手が目立つように補った目次はこんな感じ。

第1章 集合知ビジネスが今どうなっているかを兼元謙任佐々木俊尚で考える
第2章 知識の集積をどのように使いこなすかについて山崎秀夫さんと考える
第3章 企業と消費者の関係がどう変わるかをエニグモ(田中禎人・須田将啓)と考える
第4章 パーソナル化と拡散が進むソーシャルネットワークの中でどのように知識を集めるべきかをニフティ(前島一就・佐藤寛次郎)と考える
第5章 ユーザー・イノベーションが起こる条件や環境をエレファントデザイン(長田太郎・谷岡拡)と考える
第6章 ものづくりの中でデザイナーが果たしている役割についてアッシュコンセプト(名児耶秀美)と考える
まとめ 6つの対話を通して集合知と「ものづくり」をつなげるものが見えてきた
 一応、各章の前に兼元謙任と佐々木俊尚による紹介文があるのだけど、それが先行オーガナイザー(理解補助のパイロット的記述)になってない。
 各要人に関心があると、この本も興味が深まるのかもしれない。ただ、対談はたらっと進行していてあまり知的な刺激をうけない。
 この読みづらさはなんだろと思ったのだけど。
 兼元謙任と佐々木俊尚がフラットに出てくるのではなく、理論を佐々木、実践を兼元にわけて、佐々木が集合知についての見取り図と理論的枠組み、米国の潮流をスキーマティックにまとめ、兼元が実際の対談から引き出した、ライフハック的な実践の要点と、そのケーススタディの成功例のスキームをまとめるとよかったのではないだろうか。
 とま、否定的な意見になってしまったのだけど、形式的にであれ、兼元謙任と佐々木俊尚のそれぞれに知的なタスクというか作業目的を与えておくとよかったと思う。
 よくわからないということの具体的な例としては、ニフティについての対談の〆の佐々木の発言。ちょっとそれはないでしょうという脱力感がある(非難しているという意味ではないです、わからないなこれということの一例)。

佐々木 パーソナライズド集合知みたいな感じですよね。集合知には拡散していくのと集約していくものの2種類の方向性があって、拡散していくのはどんどんパーソナライズドしていくべきだけど、どこかでものづくりや製品に結びつけようとすれば、そこには集約の作業が必要になる。パーソナライズドとものづくりって、何か微妙に上と下の方向で違う感じがあるのかな。だからきっと両方必要なんでしょうけど、ここらあたりはまだ誰も分かってない地平ですね。『ウィキノミクス』を読んでもそこまで書いてないし(笑)。
 率直にいうと、ここで何を語られているのかわからないし(上と下というのも他の文脈にないようだった)、「ウィキノミクス」がここで突然ネガティブに出てきて「(笑)」となるも、ちょっとついていけない感じがした。
 これだけの人的リソースを使ってちょっともったいない本という感じがした。