さすがに50歳にもなると国家が見えてくるというか

 そうして見えてくる国家というのがある。
 俺とか10歳ころの記憶があるわけで40年前。で、俺は、戦後12年後に生まれた。子どものころは、戦争なんてむかーーーーしの話だと思っていたけど、たかが12年だったな。
 それに戦争っていうのは、現存の老人に顕著だけど、結局生き残ったものにとっては、戦後の苦難でしかない。山本夏彦翁がよく皮肉っていたけど、戦前真っ暗史観というものでもなかった。原爆の悲惨はあり、空襲は地方都市まで満遍なくの感はあるけど、疎開というか田舎の人にしてみると戦争というのは、現在日本人がイメージするそれとはかなり違う(別に暢気で平和だったとかいう意味ではないよ、全然ない、異質ということ)。
 それと、そういう意味で戦争が終わったのはサンフランシスコ条約後なんで、戦後日本が曲がりなりにも立ち上がったのは1952年。まあ、俺の生まれる5年前くらいで、そういう時代だったんだな、と。
 明治生まれの爺さん婆さんとかごろごろいたし、そういう風景が見えてくると、ああ、日本国家ってそういうもんかという感じがする。そういえば、昔は、爺さんとか「御維新(ごいっしん)」とか言うことがあった。明治30年代生まれなら、明治維新というのは今の私が戦争を思うようなもので、普通に生活感覚で連続している。